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第1197話

 アクセルはボウガンとやらを受け取った。  意外とずっしりした重さがあり、思ったより頑丈にできている。引き金も引きやすく、矢を素早くセットすればそこそこの早さで撃てそうだ。自分は致命的なまでに弓の腕がないから、こういう武器があるのは非常に助かる。 「ありがとう、兄上……本当に嬉しいよ。あなたはいつも、俺の悩みをピンポイントで解決してくれるんだな」 「私はお前のお兄ちゃんだからね。お前のことは誰よりもわかっているつもりだよ。それに、これは武器の合う・合わないの問題に近いから、苦手な部分をカバーできる武器を選べばすぐに解決する」 「そう言えば、生前俺が武器に悩んでいた時も的確なアドバイスをくれたよな。『太刀じゃなくて小太刀を二振り持ってみたら』って……」 「ああ、そうだったね。昔のお前はやたらと私の真似をしたがって、合ってないのに無理して太刀を使おうとしてたからなぁ」  兄が懐かしそうに言う。  当時の自分は兄に憧れるあまり、向き不向きに関係なく何でも兄の真似をしていたのだ。もちろん「兄のようになりたい」という気持ちは今でも変わらないが、向いていないのにその武器を使い続けるほど愚かではないつもりだ。  兄が続けた。 「お前の長所は脚力と機動性だから、小回りの利く武器の方が向いてるんだよね。私と違って足も速いし。後は単純な持久力と、武器を扱うテクニックさえ磨いてしまえばすぐ強くなれると思うな」 「ありがとう、本当に……。あなたのような兄を持てて、俺は幸せ者だ」  自分がここまでこられたのは、冗談抜きで全て兄のおかげである。  兄がいなかったらヴァルハラに招かれることもなかったし、きっと成人する前に野垂れ死んでいただろう。  それもこれも、兄が愛情をもって育ててくれたからだ。永遠に感謝してもしきれないほどの恩がある。  だからせめて自分は、少しでも兄の期待に応えなくてはならない。

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