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第1202話
自分の弓の腕が致命的だと知ったら、ユーベルはどうするだろう。ボウガンでもいいから同じようにやれというだろうか。それとも諦めて、裏方に徹しろというだろうか。
一戦目から負けるのは縁起が悪いから、あまり足は引っ張りたくないのだけれど……。
「っ!」
その時、いきなりこちらに矢が飛んで来て、アクセルはほぼ反射的に身体を捻った。
標準的な矢がこちらの耳元を通過し、後ろの木に突き刺さる。そのまま突っ立っていたら眉間に直撃して即死していただろう。
「おや、弟くんでしたか。わたくしを狙う暗殺者かと思いました」
殺意剥き出しだったユーベルが、こちらを見て動きを止める。
いきなり撃ってくるなよ……と小言を言いたくなったが、貴族サマに下手に反論するのはよろしくない。
アクセルは顔を引き攣らせて、何とか答えた。
「すみません……。声をかけようと思ったんですが、つい動きに見入ってしまって」
「そうですか。あなたもようやく、わたくしの優美さを理解してきたみたいですね」
優美さはともかく、動きが洗練されていたのは間違いない。
「来月のランクマッチでは同じチームに所属することになりました。足を引っ張らないように頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。……あ、これ手土産です」
と、持参した酒をユーベルに渡す。自分では買った覚えがないので、兄の嗜好品かもしれないが……まあ、後で同じものを買い直せば済むことだろう。
「なるほど、殊勝な心掛けですね。時に弟くんは、弓の腕はどんな感じなんです?」
「それは、ええと……あまり得意ではなくて。昨日、兄からボウガンをプレゼントされたばかりなんです」
「ほう。ボウガンなら扱えるというわけですか」
「ええ、まあ……。まだ練習中ですけど」
「最低限のスキルがあるなら問題ないでしょう。下位ランカーにわたくしレベルの技量は求めていません。わたくしの動きを真似ろと言っても、歌劇団に所属していない連中ではそれもできないでしょうしね」
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