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第1207話
「まあとにかく、共通する目標を立てるのは大事なことだよ。頑張ってね」
「……他人事みたいに言ってるけど、兄上も近いうちにランクマ出るんだからな」
そう念を押しつつ、アクセルは兄がスパスパ鹿と猪を捌いていくのを見守った。手際よく皮を裂き、内臓を取り出し、食べられる部分を切り出していく。
兄はステーキを食べる気満々だったので、新鮮な肉の一部を切り取って、それ以外は干し肉として保存することにした。これでしばらくは食料に困らないだろう。
「やっぱり新鮮なお肉は美味しいね~!」
と、大喜びでステーキにがっつく兄。
相変わらずとんでもない肉食だな……と半分呆れつつ、アクセルは付け合わせのサラダを食べた。
そしてその日は、何事もなく眠りについた。
***
翌日からランクマッチ当日まで、アクセルはみっちりボウガンの練習を行った。
ボウガンは矢を引き絞るという手順を全て省略できるので、狙いさえ間違えなければ思った通りのところに飛んでいく。ただ、長時間使っていると重心がブレることがあるので、こまめなメンテナンスは必要だ。
兄はランクマのチームメンバーと相手チームを確認し、「それならこんな感じで攻めればイケるかな」などと、何かしらの作戦を組み立てているみたいだった。兄がどんな風にチームを率いて戦うのか、今から観戦が楽しみである。
「……やっぱり、初戦は少し緊張するな」
と、家で支度しつつ独り言のように言う。ボウガンのメンテナンスをし、予備の矢をたくさん持ち、念のためヤドリギも懐に入れる。
果たしてどんな戦いになるだろう。ユーベルとランゴバルトは他の人そっちのけで戦いに没頭しそうだが、自分たちはなるべく周りを削っておかなければならない。リーダー同士、どんな戦いをするか見て勉強したかったが……そんな余裕もなさそうだ。
「まあ、生き延びるだけだったら何とかなると思うよ。正面だけじゃなくよく周りを見て、不意打ちに気を付けていればね」
兄が軽く肩を叩いてくる。
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