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第1209話

 頭の両脇を反り上げたモヒカンの男性が、こちらにガンをつけている。モヒカンそのものも赤い色だったので、随分派手に感じた。ふと、ランゴバルトの兜についている赤い羽根飾りが思い浮かんだ。もしやアレを参考にしてるんじゃないだろうな? 「いや、指定席と言われても……。あなた、この闘技場使うの初めてですよね?」  今思えば、反論せずに素直に「そうですか」と場所を空ければよかったと思う。  だがこの時のアクセルは、戦闘前でやや気が立っていた。くだらないことでいちゃもんつけてくるなよ、という気持ちも大きかった。  だからつい、余計な反論をしてしまったのかもしれない。 「あァん? オレが指定席って言ったら指定席なんだよ。つべこべ言わずに空けろやオラ」 「なんですか、その理屈は。ロッカーなんてどこを使っても同じでしょう。他にもたくさん空いてるところがあるんだから、そっちを使ってくださいよ」 「なんだと? てめぇ、オレに逆らおうってのか?」 「逆らうも何も、当たり前のことを言っているだけですが。これからランクマが始まるのに、くだらないことで労力を使わせないでください」  そう言い返したら、男はみるみる顔を赤くした。頭に血が上りやすいタイプらしく、怒りで耳から湯気が出そうになっている。 「てめぇ……いい度胸じゃねぇか……! ランクマの前にぶっ飛ばしてやらぁ!」 「ちょっと……ぶっ飛ばす相手が間違ってるでしょう。いい大人が、ロッカーの位置くらいで喧嘩吹っ掛けないでくださいよ」 「るせぇ! オレには『一番奥のロッカー使うと勝てる』ってジンクスがあるんだよ!」  知るかそんなもん、と言いたい。  というか、ジンクスがあるならあるで、最初からもっと丁寧にお願いすればよかったではないか。そうしてくれればアクセルも、「そうなんですね」と納得して場所を譲ってあげたのに。 「何をしているのです、騒々しい」  そこへリーダーのユーベルがやってきた。いつもの戦闘服に身を包み、目元にも赤い化粧を施している。

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