1211 / 2296

第1211話

 先程のモヒカン男がついて来ない。  振り返ってみたら、壊れたロッカーに寄りかかったまま目を回していた。白目を剥いて気絶しており、ピクリとも動かない。 「……はぁ」  仕方なくアクセルは、踵を返してモヒカン男に駆け寄った。  もうすぐ試合が始まるのだ。このまま放っておくわけにもいくまい。メンバーが欠けてしまっては、始まる前から人数不利になってしまう。 「大丈夫ですか? 早く起きてください」  ところが軽く身体を揺すった途端、首から上がズレてゴトン、とそれが床に落ちた。 「ひぇ……っ」  さすがにびっくりして、悲鳴を上げそうになる。ユーベルがロッカーを破壊した時に、一緒に首も切られてしまったみたいだ。あの攻撃を避けきれなかったのか。  ――うげ……マジか……。  人数不利どころか、自分で味方を殺してるじゃないか。これでいいのか、ユーベル様。  急いで控え室を飛び出し、ユーベルの元に走る。  ユーベルは他のメンバーを従え、闘技場の入退場口に並んでいるところだった。 「弟くん、何をしているのですか。さっさと後ろに並びなさい」 「すみません。ユーベル様、メンバー一人欠けちゃったんですけど。さっきのモヒカン男、死んでますよ」 「おや、そうですか。道理で人数揃わないなと思いました」  結構な緊急事態なのに、ユーベル本人は至って涼しい顔をしている。 「まあ、そこまで問題はないでしょう。あの程度で死んでいるようでは、試合でもたいして活躍できないでしょうし」 「それは……そうかもしれないですが、メンバーを補充しなくていいんですか?」 「そこは気にしなくていいと思いますね。どうせランゴバルトも、始まる前に足手まといになりそうな連中を二、三人殺めているでしょうから」 「ええ……?」  ……殺めてから試合開始って、上位ランカーのやることはアクセルには理解できない。

ともだちにシェアしよう!