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第1211話
先程のモヒカン男がついて来ない。
振り返ってみたら、壊れたロッカーに寄りかかったまま目を回していた。白目を剥いて気絶しており、ピクリとも動かない。
「……はぁ」
仕方なくアクセルは、踵を返してモヒカン男に駆け寄った。
もうすぐ試合が始まるのだ。このまま放っておくわけにもいくまい。メンバーが欠けてしまっては、始まる前から人数不利になってしまう。
「大丈夫ですか? 早く起きてください」
ところが軽く身体を揺すった途端、首から上がズレてゴトン、とそれが床に落ちた。
「ひぇ……っ」
さすがにびっくりして、悲鳴を上げそうになる。ユーベルがロッカーを破壊した時に、一緒に首も切られてしまったみたいだ。あの攻撃を避けきれなかったのか。
――うげ……マジか……。
人数不利どころか、自分で味方を殺してるじゃないか。これでいいのか、ユーベル様。
急いで控え室を飛び出し、ユーベルの元に走る。
ユーベルは他のメンバーを従え、闘技場の入退場口に並んでいるところだった。
「弟くん、何をしているのですか。さっさと後ろに並びなさい」
「すみません。ユーベル様、メンバー一人欠けちゃったんですけど。さっきのモヒカン男、死んでますよ」
「おや、そうですか。道理で人数揃わないなと思いました」
結構な緊急事態なのに、ユーベル本人は至って涼しい顔をしている。
「まあ、そこまで問題はないでしょう。あの程度で死んでいるようでは、試合でもたいして活躍できないでしょうし」
「それは……そうかもしれないですが、メンバーを補充しなくていいんですか?」
「そこは気にしなくていいと思いますね。どうせランゴバルトも、始まる前に足手まといになりそうな連中を二、三人殺めているでしょうから」
「ええ……?」
……殺めてから試合開始って、上位ランカーのやることはアクセルには理解できない。
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