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第1214話※

 他のメンバーもざわついていたが、ユーベルは至って涼しい顔をしている。 「あなた達は好きなところで戦いなさい。わたくしはランゴバルトの相手をします」 「は、はい……」  やっぱり作戦はないようだ。こうなったら、それぞれが自分の思うように戦うしかない。  ――しょうがない、俺だって死ぬわけにはいかないんだ。試合が終わるまで、何とか生き延びなければ。  アクセルは兄にもらったボウガンを構えた。矢もしっかりセットし、いつでも撃てるように引き金に指を添える。 「三……二……一……スタート!」  掛け声と共に、ランクマッチバトルが始まった。  早速ランゴバルト以外の戦士に攻撃しようとボウガンを向けた次の瞬間、 「っ!?」  視界の横から手斧が飛んで来て、ぞわっと背筋に寒気が走った。  ほぼ反射的に身体を反らし、ギリギリのところで回避したものの、代わりに別の戦士にグサッと突き刺さってしまう。 「ぐげっ……!」  死角から襲来した手斧を頭に受け、その戦士はバタリと地面に倒れた。  もうひとつの手斧も、同じように反対側にいた戦士の顔面に命中し、顔が真っ二つに割れてしまう。  ――嘘だろ!? 開始二秒で二人死んだんだが!?  手斧を投擲したのは、やはりランゴバルトだった。自分で殺した戦力分を、早速取り戻しにきたようだ。 「これで心置きなく戦えるな! 行くぞ、グオァアァァ!」  ランゴバルトが咆哮を上げる。  途端、彼の殺気がぶわっと膨れ上がり、ただでさえ大きな身体が一回り以上大きくなった。比喩ではなく本当にそう見えた。周囲の空気が重くなり、フィールドの重力が倍増したような錯覚に陥る。 「くっ……!」  自分の身体もいつもより動かしづらくなり、嫌な汗が滲んできた。できることなら、今すぐここから逃げ出したいくらいだ。  ――う……さすがにこの雰囲気はすごい……!

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