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第1217話※

 ――こうなったら……!  本当はもっと後にとっておきたかったが、ここに至ってはやむを得ない。出し惜しみして生き残れる状況でもない。  アクセルは腹に力を込め、狂戦士モードを解放した。 「タアァァァッ!」  狂戦士(バーサーカー)になった途端、身体が軽くなって痛みもなくなり、視界も一気に鮮やかに広がって見える。これならしばらくは保つはずだ。 「おお、弟くんもようやく狂戦士(バーサーカー)になりましたか! これでより一層楽しく踊れますね!」  と、ユーベルが喜びの雄叫びを上げる。  景気づけのように再び空に大量の矢を放ちつつ、横から飛んできたランゴバルトの矢をひらりと避けていた。  今なら自分も、あんな風に動けるような気がしてくる。 「はっ!」  続けざま飛んできた矢を、アクセルも身体を捻って避けた。だがユーベルのようにはいかず、ギリギリの回避になったせいで太ももを矢が掠めた。当たった部分の布が破れ、ピッと細く鮮血が吹き飛ぶ。 「っ……」  もちろん痛みはない。が、だからといって傷が増えるのはよろしくない。ダメージは確実に身体に蓄積しているのだ。これ以上攻撃を受けるわけにはいかない。  アクセルは中央付近から距離を取り、矢を何本か放った。  一応ランゴバルトを狙ったのだが、彼は飛んできた矢のほとんどを手ではたき落とし、掴んで止めた矢はバキッと片手でへし折ってしまった。  それどころか、反撃と言わんばかりにこちらに極太の矢を三本も放ってきて、頬や二の腕が擦り切れてしまった。矢は避けているのに、確実に傷が増えていくことが恐ろしい。  ――ダメだ……俺の攻撃なんか全然通用しない……!  鼻息ひとつであしらわれてしまい、じわじわと焦りが芽生えてくる。  攻撃もできない、逃げても傷が増える、かといって回避しなかったら即死する、狂戦士モードが解かれても死ぬ……とは、本格的に詰んでいるのではなかろうか。

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