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第1220話
すぐさま動こうと思ったが、自分が壁にめり込んでしまっているせいで一瞬逃げるのが遅れた。
――ああもう……肝心な時に……!
回避も間に合わず、せめて防御だけでもと持っていたボウガンで頭を庇う。
鉄の拳があと数センチに迫ってきた刹那、不意にランゴバルトの動きが止まった。
「っ……!?」
いつまで経っても衝撃が来ないので、ハッとして顔を上げる。
どういうわけかランゴバルトは、こちらに拳を突き出したままの姿勢でピタリと止まっていた。まるで石像のように動かなかった。
「え、なんで……は?」
一体何が起きたのだろう。
すぐには理解できず、よろよろと壁から抜け出し、固まっているランゴバルトの背後に回る。
すると彼の兜と鎧の隙間に、巨大な光の弓矢がぶっ刺さっていた。しかも寸分違わず頸椎を刺し貫き、首の骨から背骨まで一気に貫通している。
ここは人体に共通する弱点なので、刺されたら即死確定だ。ランゴバルトも例外ではなかった。
――な、何だこれ……? 何でこんなものが急に……。
あまりに唐突な展開に、頭が混乱しかける。
だが、次に天から降ってきた声に、一気に現実に引き戻された。
「ランゴバルト、警告二回により失格。強制退場となります。よって、勝者はユーベル率いるチームとなります」
「え……」
そう言えば、「体術はルール違反」との警告が一度天から降ってきた。
その時はそれどころじゃなかったし、戦いの展開によっては――それこそ、矢が切れてしまった場合なんかは――体術を使うのもやむなしと思っていた。なので、ランゴバルトが拳を振るってきたのも自然な流れだと解釈していた。
だが主催者であるヴァルキリーたちは、そういったルール違反に目を瞑るつもりはないらしい。それどころか、違反回数が二回以上になった場合は光の弓矢で強制的に止めてくる。
……なんだか随分乱暴な運営だ。こんなやり方でいいのか。
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