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第1222話
身体の痛みは相変わらずだったが、兄に背負われたことでなんだかホッとしてしまい、アクセルはぎゅっ……と首筋に抱きついた。
「おや、フレインではないですか。弟くんのお世話とは、相変わらず過保護ですねぇ」
ユーベルがやや呆れた目を向けてくる。
そういう彼も、従えている「ユーベル歌劇団」の連中を呼び出し、使った武器を預けて水とタオルを受け取っていた。
「やあ、ユーベル。きみは相変わらずピンピンしてるね」
「まあ、あの程度ではわたくしを傷つけることはできませんから。やるなら弓兵を一〇〇〇人くらい用意するか、百発百中の神器を持ってくるべきです」
そう豪語した通り、ユーベルの身体に傷らしい傷は見当たらなかった。内臓も損傷しているようには見えなかった。
あの猛攻の中を無傷で生還できるのはさすがというしかない。
だが兄は、苦笑しながら続けた。
「まあ、回避に関してはきみはトップクラスだと思うよ。でも、今回はお互い打点がなくて若干泥仕合になりかけてたよね」
「そこはやむを得ません。わたくしはランゴバルトに致命傷を負わせられませんし、ランゴバルトもわたくしに攻撃を当てられない。こんな組み合わせを考えた運営に問題があるのです」
「ランクマはまだ始まったばかりだからね。ルールも微妙だから、これから徐々に改善されていくだろうさ。さすがに、ああいう反則負けで試合を強制終了させられるのは、どちらにとっても不本意だし」
「まったくです。そもそも、最初から飛び道具オンリーなんて無理があるんですよ。徒手空拳くらいは目を瞑るべきです。本当に、ヴァルキリーどもは頭が堅くて困ります」
ユーベルが横目でランゴバルトの遺体を見る。
今まで激しく動いていた人が不意打ちのように死んだせいか、あっという間に死後硬直が始まって遺体回収班も苦労しているみたいだった。ただでさえ大男なのに、あのままの格好で固まられると棺に入れるのも大変そうである。
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