1223 / 2200

第1223話

 次いでユーベルはこちらに近づき、からかうように言った。 「弟くんも、せっかく狂戦士モードになったのなら、もう少し頑張るべきでしたね。動き自体は悪くなかったのに、もったいないことです。まあ、今回は最後まで死ななかっただけヨシとしましょう」 「いっ……!」  わざと脇腹をつつかれ、とんでもない激痛に叫びそうになった。  声を殺して悶絶していると、兄が苦笑しつつ代わりに答えてくれた。 「まあとにかく、今日のところはお疲れ様だ。また楽しいバトルができるといいね」 「ええ、そうですね。フレインも、たまには宴に参加しませんか? みんなで愉快に踊りましょう」 「気が向いたらね。それじゃあ、私たちはこれで」  兄はさっさと足を動かし、スタジアムを出てオーディンの泉に向かった。  先程の試合に出ていた連中はほとんど棺行きだったので、こちらは比較的空いていた。 「っ……!」  兄に背負われたまま、ざぶざぶと泉の中心に入っていく。水が細かな傷に沁み込み、一瞬飛び上がるくらいに痛かった。兄にしがみついていなければ、大声で叫んでいたかもしれない。 「アクセル、大丈夫かい?」 「ま、まあ何とか……」 「そう。じゃあこのまましばらく我慢しててね。傷が治るまでの辛抱だよ」 「わかってるよ……」  仕方なくアクセルは、痛みに耐えながら泉に浸かり続けた。  しばらく無言でいると、兄が何気なく話を振ってきた。 「それにしてもお前、よく生き残ったね? 正直、お兄ちゃんはもうダメかと思ってたよ」 「それは……兄上が『お前が棺行きになったら寂しくて浮気しちゃうかも』なんて言うから」 「ありゃ、そんなこと言ったっけ?」 「言っただろ、思いっきり! 試合中にもアイコンタクトで心の声が聞こえてきたよ!」 「……え、本当に?」 「本当だよ。だいたい兄上だぞ、『ランゴバルトを倒せないなら別の方法で試合を終わらせるまでだ』って教えてくれたのは」 「えっ……?」  兄が少し言葉を失っていたので「あれ?」と思った。

ともだちにシェアしよう!