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第1228話

「アクセル、私はちょっと出掛けてくるよ」  兄が太刀を下げて庭に出てきたので、アクセルは素振りをしていた手を止めた。 「出掛けるのか? どこに行くんだ?」 「うん、ちょっと武器屋までね。ボウガンのお礼もしたいし」 「ああ、そうか……。それじゃ俺も一緒に行った方がいいかな」 「いや、お前はしっかり鍛錬してなさい。早く私に追い付きたいんだろう?」 「まあな。じゃあ行ってらっしゃい。夕飯は俺が用意しておくから、食材は買ってこなくていいぞ」  そう釘を刺し、アクセルは兄を送り出した。  兄がいない間も黙々と鍛錬を行い、夕方までみっちりトレーニングをした。腕の筋肉を重点的に鍛えたので、終わる頃には二の腕がパツパツになっている感じがした。  ――さてと……そろそろ食事の準備でもするか。  軽くシャワーをしてからキッチンに入り、夕飯の食材を掻き集める。  兄には「食材は買ってこなくていい」と言ったものの、早くも材料が枯渇していた。兄に食事を作らせると、必要以上に食材を使ってしまってすぐになくなってしまうのだ。  もともと大食いだしピピもいるから仕方ないけれど、うちのエンゲル係数はきっととんでもないことになっていると思う。  明日食材を買い直すとして、今日の夕食は軽く済ませよう。昼にかなりいっぱい食べたし。  生ハムのサラダとチーズに、薄くスライスしたパン、それにコーンスープを合わせて夕食は完成だ。兄にとっては少々物足りないかもしれないが、どうせ夕食後は寝るだけなのでこれくらいがちょうどいい。 「ただいまー」  そうこうしているうちに兄が帰ってきた。  テーブルに並べられた夕食を見た瞬間、兄はほんの少しだけ「おや?」と目を丸くした後、にこりと微笑んだ。 「今日も美味しそうだね。でもやっぱり食材は買ってきた方がよかったなぁ」 「いや、それは明日俺が買いに行くから大丈夫だ」  ……やはり、兄にとってこの量はちょっと物足りないらしい。

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