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第1229話
心の中で苦笑いし、アクセルは兄と向かい合って食事をした。
主食は軽めだったが、食後にデザートのハチミツシフォンを出してやったら、とても喜ばれた。
***
いつもの就寝時間より少し早く、アクセルはベッドに入った。
ランクマッチをこなし、午後もしっかり鍛錬したら疲れてしまったようだ。今夜は朝までゆっくり眠れそうだ……。
「ねえ、アクセル」
うとうとと眠りに入りかけていたら、兄がベッド脇に腰掛けてきた。
挑発するように髪を弄ってきて、耳元で囁いてくる。
「ね、ちょっと遊ばない? 面白い道具借りてきたんだ。きっとお前も気に入ると思うよ」
「ん……」
「ほら、いっぱい戦ってお前も溜まってるでしょ? 一度発散させた方がいいよ。ね?」
「…………」
あれこれ囁かれたが、アクセルの頭には何も入ってこなかった。
今は何より眠気の方が勝っていた。
「……いや、いい。今日はもう寝る……」
「え? 寝ちゃうの?」
「うん……そういうのは、また明日な……」
「明日ねぇ……? じゃ、明日になったら好きにしちゃっていい?」
「……いいから、今日はおやすみ……」
「そうかい。じゃあおやすみ、アクセル」
兄が「おやすみのキス」をしてくれたのはわかったが、正直自分が何を言ったか覚えていなかった。
アクセルはそのまま朝までぐっすり眠ってしまった。
***
翌朝。アクセルはいつもより早く起きて庭で走り込みを行っていた。
昨日はよく眠れた気がする。朝まで熟睡できたので目覚めもよかった。今日もいい一日になりそうだ。
朝食前のトレーニングなので、ランニングをした後は軽くストレッチをし、簡単に汗を流して朝食の準備をした。
半熟の目玉焼きとベーコンを皿に盛り、千切ったレタスとミニトマトを添え、厚めに切ったトーストを焼いてバターとジャムを用意する。
熱々のコーヒーを淹れ、テーブルに並べたところでふと顔を上げた。兄はまだ起きて来なかった。
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