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第1230話
――兄上、まだ寝てるのか?
仕方ないのでアクセルは、兄を起こしにベッドの側に寄った。
「兄上、朝だぞ。朝食もできたから、そろそろ起きてくれ」
「んー……?」
「ほら、今日は兄上の好きなベーコンエッグだぞ。トーストも焼きたてで食べごろだ。だからそろそろ起きてく……」
そう言いかけた途端、いきなり腕を掴まれてベッドの中に引きずり込まれた。
もがいている間に長い腕で抱き締められ、逃げ出すことができなくなってしまう。
「あ、兄上、ちょっと……」
「そうか、今が食べごろなんだね? じゃあこのまま食べちゃおう」
「はあっ!?」
いきなりわけのわからないことを言われ、布団の中で叫んでしまった。
さすがに今やられるわけにはいかず、アクセルは精一杯の抵抗を示した。
「いや、ちょっと待ってくれ! 食べるのはいいが、今はリアルな食事をしてくれ!」
「リアルな食事って? こっちだってリアルな食事じゃない?」
「違うだろ! リアルな食事っていうのは、普通の食べ物を食べることだ! 少なくとも俺は食べ物じゃない!」
「それは知ってるけど、お前昨日は疲れてそのまま寝ちゃったじゃない。その分、今日は何をしてもいいって言ってたよ?」
「えっ!? 俺そんなこと言ってないぞ!? 兄上の勘違いだろ!」
「いやいや、勘違いじゃないよ。昨日寝る前に、『そういうのはまた明日な』って言ったじゃないか。『好きにしていいから、今日はおやすみ』って」
「えええ!? 嘘だ!」
申し訳ないが、全く覚えていない。何かを話しかけられたような気がするが、自分がどう答えたのか全然記憶になかった。
――い、いや、仮に変なことを言ってたとしても、意識朦朧としてる時に言った言葉なんてノーカウントだろ!
半ば開き直りのように、アクセルはぐいと兄の身体を押し退けた。
「とにかく、今はダメだ! せっかく作った朝食がもったいない。ちゃんと朝食は食べてくれ」
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