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第1231話

「……そうかい? そこまで言うなら仕方ないね」  苦笑いしつつもベッドから下りてくれたので、ちょっとホッとした。こんな朝っぱらからやらかすわけにはいかない。  兄は爆発した金髪を手で整えながら、こんなことを言い出した。 「そういやお前、以前より腕の力強くなった?」 「? そうか? 自分ではよくわからないが」 「なってると思うよ。前は私の手を振り解けなかったのに、今は『やめろ!』って抵抗できたじゃない」 「それは……単に、早く朝食を食べて欲しかっただけで」 「それでもさ、以前のお前だったらそのまま組み敷かれてたと思うんだ。口では嫌がってみせるけど、何だかんだで流されちゃうのがお前だったからね」  軽く笑い、しみじみと兄が言う。 「強くなったなぁ……本当に」 「そ、そうだろうか……」 「そうだよ。鍛錬の成果は確実に出ている。これからも頑張りなさい」  ぽん、と肩を叩き、兄はスタスタとリビングとは別方向に歩いて行った。 「あの、どこに行くんだ?」 「いやぁ、ちょっとシャワーをね。髪があまりに爆発して直らないんだ」  すぐ戻って来るから、浴室に消える兄。  残されたアクセルはやや訝しげに首をかしげた。 「……なんか変だな」  上手く言えないが……「強くなったなぁ」と呟いた兄が、あまり喜んでいる風に見えなかったのだ。いつもの兄だったら、弟の成長を見て自分のことのように喜んでくれそうなものだが、それとはちょっと違っていた。少なくともアクセルにはそう見えた。  ――単に寝起きで機嫌が悪かっただけだろうか……。  また変な兆候だったら嫌だな……と思ったけれど、浴室から出てきた兄はいつもと変わらない雰囲気だったので安心した。  二人は向き合って朝食をとった。目玉焼きも上手く焼けたし、トーストも美味しい。  十分な食事とゆっくり眠れる場所、それと大好きな兄。これがあればアクセルは幸せだ。

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