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第1236話

 ――兄上、一体どうしちゃったんだろう……?  ランクマッチが終わってから、どうも様子がおかしい。何が気に食わないのか、妙に苛立っているようだった。  思い当たるところがなく――いや、ないわけでもないが、遊ぶのを断ったくらいでここまで臍を曲げるとも思えないので――どう扱えばいいか、アクセル自身も困惑しているのだ。  ――そっとしておいた方がいいのかな……それとも、話を聞いてあげた方がいいのかな……。でも、無理に話を聞き出したところで「何でもない」って言われそうだし……。  このまま自然に元に戻ってくれれば一番いいのだが。兄に臍を曲げられると、自分もどうしていいかわからなくなる。  とりあえずいつも通り振る舞うことにして、少し様子を見てみよう。この間獣化したばかりだからさすがに獣化ってことはないだろうし、ただ機嫌が悪いだけなら滅多なことは起こらないと思う。 「さて、じゃあ私は鍛錬に戻るよ。お前も好きなように鍛錬しなさい」  そう言って、兄はレモン水のボトルを置き、上着を着直して鉄棒にぶら下がった。今度は腕で普通にぶら下がり、懸垂を始める。先程腹筋をしていて鉄棒から落ちたので、落ちないような鍛錬に切り替えたみたいだ。  ――というか兄上、腕力もかなりのものだよな……。  昔からそうだが、腕力に関しては兄に勝てた試しがない。腕相撲をしたら、二秒も経たずに敗北してしまいそうだ。 「……よっ、と」  自分はどれくらいできるようになったのか気になり、アクセルも兄の隣の鉄棒にぶら下がった。  五十回できればいいところだろうと思っていたけれど、カウントしていったら意外と楽に五十回を超えてしまい、何だかんだで連続七十六回こなすことができた。もしかしたら新記録かもしれない。 「……お前、随分腕の力もついてきたじゃない」  兄が懸垂しながら話しかけてくる。そういう兄は未だに懸垂を続けていた。一体何回やったのだろう。

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