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第1239話
――やっぱり、一度きちんと話し合った方がいいかもしれないな……。
アクセルは兄のことを尊敬しているし、昔からその強さに憧れている。けれど兄は、いろいろ思うところがあるのかもしれない。
こういう僅かな違和感はあまり放置しない方がいい。
「……よし」
ストン、と鉄棒から下り、アクセルも訓練場を出て家に帰った。
いくら考えても、わからないものはわからない。そういう時は思い切って聞くしかない。
「ただいま……って、ええ?」
先に帰っていた兄は、台所で黙々と食材を切り刻んでいた。肉はもちろん、野菜もたくさんある。
ちょっと引くほどの量だったので、さすがに顔が引き攣った。
「あの、兄上……? 一体何を作っているんだ?」
「ああ、今日は鍋にしようと思ってね。これなら肉も野菜もたくさん食べられるし。栄養バランスもいいだろう?」
「う、うん……それはそうだが」
「お前、辛いのはあまり得意じゃなかったよね。そしたら豆乳鍋にしようか。いっぱい煮たら湯葉にもなるかもしれないし」
いや、湯葉にはならないんじゃないか……と思ったが、それ以上に兄の言動が不可解だった。
修行場ではご機嫌ナナメだったのに、今はいつもと変わらないように見える。
「……兄上、本当に大丈夫か? 何かさっきから調子が変というか」
「ええ? 別に変じゃないよ。お前は一体何の心配をしているんだい?」
「でも……」
「そんなことよりお前、洗濯物がだいぶ溜まっていたよ。濡れた服もそのままだったし、ランドリーに行ってきてくれる?」
「あ、ああ……わかった」
言われた通り、アクセルは洗濯カゴごと洗濯物を抱え、家の近くのランドリーに行った。
魔法のドラムにドサッと洗濯物を放り込み、蓋を閉めて中の洗濯物が回るのを見つめる。
――本当に、何なんだろう……。
上手く言えないが、機嫌がコロコロ変わっている気がする。
話をしようと思ったのに、「おかしくない」などとはぐらかされると、それ以上追及もできないではないか。
兄は一体、何を考えているのだろう……。
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