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第1240話

「お? 弟くんじゃねぇか。こんなところで会うなんて奇遇だな」 「あ……ジーク様、お久しぶりです」  隣のドラムを使いに来たのは、兄の元彼・ジークだった。  アクセルにとっては複雑な存在なのだが向こうは全く気にしていないようで、それもまた複雑な気持ちに拍車をかける。  ジークは自分の服をドラムに放り投げつつ、聞いてきた。 「なんだ、元気ないな。また変なことで悩んでるのか?」 「変なことって何ですか……。俺にとっては大事なことなんですよ」 「じゃ、またフレインのことだな。お前さんが悩むことなんて、大抵フレイン絡みのことだからさ」 「……さすがによくわかっていらっしゃる」  少し苦笑いしつつ、アクセルはぼんやりドラムを眺めた。兄の白いマントがごぅん、ごうん……と音を立てて洗濯されていく。 「んで? 今度は何があったんだよ? 話したくなきゃ話さなくてもいいけどな」 「…………」 「ただ、そういうのは早めに解決しておいた方がいいぜ? 事が大きくなってからだと手遅れになることもあるからな」 「それは……」 「まあ俺としては、あのメンヘラ男がまたこっちに寄りかかって来るのが面倒なだけだが」 「…………」  確かに、ジークの言わんとしていることは理解できる。アクセル自身も、こういう違和感はなるべく早く解消しておいた方がいいのはわかっているのだ。  兄の元カレに悩みを打ち明けるのもどうかと思うが、兄がまたジークに甘えに行くのもそれはそれで嫌だし……。 「……兄の気持ちがわからないんです」  アクセルは呟くように言った。 「ランクマが終わった辺りから、なんか様子がおかしくて。『強くなったねぇ』って感慨深げに言ったかと思えば、『お前に追い付かれるのは怖い』とか言い出したり。そうかと思えば上機嫌に鍋の準備したり、本当にわけがわからないんです……」 「はあ、なるほどな……」

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