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第1241話
「今までは強くなったら純粋に喜んでくれていたのに……ランクが上がる度に『頑張ったね』って褒めてくれてたのに……なんでいきなり落ち込み始めたんでしょうか。俺が強くなるのが嫌なら、最初から喜ばないはずですよね? だんだん俺のランクが自分に近づいてきたから怖くなってきたってのは何となくわかりますけど、あそこまでコロコロ機嫌が変わるのも納得できないし……」
「そうか……」
「兄は一体何を考えているんでしょう……」
「あー……そうだなぁ……」
ジークは顎に手を当て、考える素振りをした。何となく察しはついているような顔だった。
――ジーク様の方が兄上の気持ちをわかっていたとしたら、それはそれで複雑なんだが……。
一緒に過ごしている期間は絶対に自分の方が多い。自分は赤の他人ではなく実の兄弟だし、兄に対する気持ちだって誰にも負けない。それだけは自信を持って言える。
それなのに他人の――しかも元カレの方が兄を理解していたとしたら、自分の立場がないではないか。
いや、今は自分の気持ちより問題解決を優先しないといけないのだが……それでも、複雑な気持ちは消えない。
「まあ、ある意味あいつらしいかもしれんな」
全てを悟ったように、ジークは言った。
「あいつはきっと、兄貴特有の悩みを抱えてるんだ。弟のお前さんにはあまり理解できないかもしれんな」
「……どういう意味ですか、それは」
「お前さんが思っているより、あいつは『兄としての自分』を大事にしてるってことだ。こだわりと言ってもいいかね」
「こだわり……」
「だから、弟ポジションのお前さんがわからないのもしょうがねぇんだ。あいつとお前さんじゃ、生まれた順番も立場もまるで違うんだから」
「…………」
そう言われて、ますますムッとした。立場が違うのはわかるが、弟の自分は理解できなくて、大兄弟の次男であるジークは理解できる。その事実がどうにも悔しくてならなかった。
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