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第1243話
「ところが、お前さんはフレインの心情そっちのけでどんどん強くなっていく。もちろん、お前さんが悪いわけでは全くないし、育ての親としては弟が強くなるのは普通に嬉しいことだろうけどな。でも、お前さんがあまりにも強くなりすぎて、あいつの助けを必要としなくなったら、それはもう『不要』のレッテルを貼られているのと同じなんだ。少なくともあいつはそう考える。あいつにとって一番恐ろしいのは、弟から『もういらない』と思われることなんだ」
「そんな……俺がそんな風に思うわけないじゃないですか」
アクセルは強い口調で主張した。
「兄上を『もういらない』なんて思うことは、これから先も絶対にありません。仮に兄上に追い付いたとしても、追い付いたのは腕っ節だけで、性格的な部分は全く変わらないんですよ。俺は何かとそそっかしいし、危機意識も薄いせいか、兄上に助けてもらわないとすぐ罠に引っかかっちゃいます。独り立ちできてないようで恥ずかしいですが、俺には兄上が絶対必要なんです」
「……というのがお前さんの意見だろ。だったらそれを、フレインにぶつけてみたらどうだ?」
と、ジークがひらりとかわしてきた。
「俺に言ったってしょうがないからな。悩み相談はできるが、実際に解決するのはお前さんだ。どこまでフレインに伝わるかわからんが、洗濯終わったらお兄ちゃんに訴えてみな」
「は、はい……そうですね」
アクセルは洗濯ドラムに目を戻した。
洗濯物が中でぐるぐる回っているが、水洗いの段階は終わって乾燥に入っているようだ。これならあと数分で洗濯が完了するだろう。
「……でも複雑ですね。俺は早く兄上に追い付きたい。でも兄上は、俺にこれ以上強くなられたら困る。兄上がそんなに悩むなら、俺は今のランクで妥協するのもやむを得ないと思ってますけど……公式死合いで兄上と戦う夢は、諦めないといけないのかな……」
独り言のように言ったら、ジークは軽く息を吐いた。
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