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第1244話

「だから、そこは『強くなる』の認識の差だろ。フレインは『ランクが上がる=腕っ節が強くなる=危ない目に遭わなくなる』って考えてて、お前さんは『ランクが上がっても自分の危機意識はそのままだから、降りかかるリスクは変わらない』と思ってる。そこをすり合わせていけば、別に諦める必要ないんじゃねぇか?」 「あ、そうか……そうですよね……」  そう言われて、胸のつかえがすとん、と落ちた。  確かにその通りだ。兄とは考え方にズレがあるだけで、夢を諦める必要はない。今まで通り上を目指していいし、兄との死合いを夢見ていいのだ。それだけで、だいぶ気が楽になった。  アクセルはお礼がてら、小さく微笑んでみせた。 「ジーク様、いろんな人から相談されること多いでしょ」 「はん? まあ、知らないヤツからあれこれ悩みを打ち明けられることは多いな。何でだ?」 「ジーク様の回答が、あまりに的確だったので。口も堅そうだし、変なこと言わなさそうだし、話しかけづらい雰囲気もないし……悩みを抱えた人からすれば、理想の存在ですよね」  同じ上位ランカーでも、ミューの場合は「それは僕にはわかんないなー」という言葉で逃げそうだし、ユーベルに相談するには敷居が高そうだし、ランゴバルトは論外である。  そう考えるとジークが一番の適任者であり、彼に悩み相談が集中してしまうのは、ある意味当然だと言える。 「あー……まあ自分でも、面倒見はいい方だと思うがな。弟や妹がたくさんいたせいかね」 「そうかもしれませんね。そういうジーク様は、何か悩みとかないんですか? 普段は誰に相談してるんですか?」 「相談しねぇよ。俺には別に、これといった悩みはないからな」 「え……本当にないんですか?」 「ああ。正確には、考えても無駄だと割り切ってる感じかな。あれこれ考えてても杞憂になることが多いし。それなら、無心で鍛錬に打ち込んでいた方が余程自分のためになる」 「それはそうかもしれませんが」

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