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第1245話
「何事も、ほどほどに生きるのが一番だと思うぜ。人間関係も、程よい距離を保つのが一番楽だ。余計なことに煩わされずに済むしな」
「…………」
その台詞が、アクセルには少し引っ掛かった。
程よい距離を保つのが一番って……ジークは兄の元カレではなかったのか? 付き合っている者同士なら、当然あんなことやこんなことをしてたんだよな? それはかなり深い仲と言えないだろうか……?
「あの……ジーク様は俺が来る前、兄上と付き合っていたんですよね?」
「ああ、傍目にはそう見えただろうな。正確には、寄りかかって来るフレインを適当に相手してやっただけだが」
「適当にって、そんな……」
そんないい加減な気持ちで兄上を抱いたんですか……とまでは、さすがに言えなかった。口にするのも恥ずかしいし、そんな昔のことを蒸し返されるのも嫌だと思う。
でも、どうせ付き合うならもっと兄を大事にして欲しかった。アクセルにとってフレインは、唯一無二の大切な兄なのだ。それを適当に扱われるのは、やっぱりちょっと許せない。
「まーた不満そうな顔してるな。お前さん、俺とフレインが関係を持ってたことがそんなに気に食わねぇのか」
「……昔のことはいいです。どうにもなりませんし。ただ、兄を適当に扱っているのが腹立たしかっただけですよ。どうせ付き合うなら、もっと大事にしてくれればよかったのに」
「おいおい、何で俺があいつを大事にしてやらないとならねぇんだ? そりゃ人並みには扱うけど、必要以上に優しくはしねぇよ。そんなことしたら、また変なところで依存してくるじゃねぇか」
「だけど……」
「フレインには冷たいくらいでちょうどいいんだ。下手に優しくすると、また浮気するだろうし。少なくとも俺は、お前らの痴話喧嘩に巻き込まれるのは御免だね」
「……まあ、そうなんですけどね」
確かに、元カレが今も優しかったらもっと頻繁に浮気していそうだ。そっちの方が困るので、ジークが兄をぞんざいに扱うのは、ある意味正解なのかもしれない。
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