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第1248話
アクセルは気にせず、続けた。
「……兄上に気持ち、なかなかわかってあげられなくてごめん。俺はいつも自分のことで精一杯で、周りへの気遣いが疎かになりがちなんだ。ピピの身体を洗ってあげるのも、しょっちゅう忘れて頭突きされるしな……」
「…………」
「兄上は『アクセルが強くなったらもう私なんていらない』と思ってるかもだけど、全然そんなことはないんだ。強くなってもそそっかしいところはそのままで、兄上の助けなしには生きていくのも難しい。一人で歩いている時に変な男たちに襲われたら、それこそ永遠に監禁されそうだし」
「それは……いろんな意味でどうなのかな……。いくら集団で来られたとしても、格下の戦士にずっと監禁されたままなのはマズくない?」
「た、ただの例え話だよ……。とにかく俺は、兄上なしじゃ安全を確保できないんだ。どんなに強くなっても、そこだけはずっと変わらない」
「……それもそれでどうかと思うけどねぇ」
「しょうがないだろ。俺は物心つく前から兄上が守ってくれるのが当たり前だったから、ヴァルハラに来てからも危機感が全く育たなかったんだ。兄上の教育の賜物だ」
開き直るように言い切ったら、兄はますます驚いて固まってしまった。
アクセルは続けた。
「だからさ……『私はいらないのかも』なんて思わないでくれよ。何度も言うけど、そんなこと絶対にないから。仮に俺がランキング一位になったとしても、兄上の助けがないと生きていけないから。それだけは確実だから、ちゃんと覚えておいてくれよな」
「アクセル……」
「それと、何か困ったことや悩み事があるなら俺にも言ってくれ。俺じゃ頼りにならないかもだけど、なるべく一緒に解決方法を探すからさ。それが無理でも、話を聞くことくらいはできる。だからそんな、一人で何でも抱え込まないでくれ」
「はは、そうだね」
兄が軽く笑った。
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