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第1250話
しばらく共に鍛錬できないのは残念だが、とりあえず自分の気持ちは伝わったようだ。
アクセルは箸を動かし、兄が入れてくれた肉を食べた。食べやすいように一口サイズに切られていて、硬い筋には全部包丁が入れられていた。
普段は大雑把な兄が、こういった細かい気遣いをしてくれるというのは、それだけ自分が愛されている証拠なのかもしれない。
「それにしても、やっぱり腹を割って話すのは大切だな。ジーク様の言った通りだ」
「……は? お前、ジークに相談してたの?」
「あ、いや……洗濯してる時にたまたま遭遇して……。それで『また何か悩んでるのか』って聞かれたから、ついでに相談させてもらったんだ」
「へぇ~……? 随分仲がいいんだねぇ? お前たちがそんなに仲良しだったなんて知らなかったよ」
「ち、違うって! 本当にたまたま会っただけなんだよ! 変なことは一切してない!」
「ふーん……?」
兄がじっとりした目をこちらに向けてくる。
内心冷や汗をかきながら、アクセルは自分の発言を後悔した。何の気なしにぽろりと言ったことだが、余計なこと言うんじゃなかった。
――でも、兄上だってジーク様と浮気してるのに、なんで俺だけ責められなきゃいけないんだ? 理不尽な……。
何なら兄の方がジークともっとすごいことをしてるくせに……たまたま相談の機会に恵まれただけで、そこまで睨まなくてもいいではないか。
やや納得できない気持ちを抱えつつ、アクセルは煮込まれた野菜を口にした。ごまだれが絡まって美味しかった。
***
その夜。食後のミルクティーを飲み、風呂で身体の汚れを丁寧に洗い流し、就寝着に着替えてベッドに入った。
濃厚な一日だったけど、夜はゆっくり眠れそうだ。明日からまた鍛錬を頑張らなくては。
兄と一緒に鍛錬できないのはちょっと寂しいけど……。
「ねえ、アクセル」
眠りかけていたところに、兄がベッドに潜り込んできて一気に目が覚めた。
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