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第1252話
「えっ!?」
ぎょっとして目を見開いたが、兄の目は本気のようだった。
続けざま、懐から妙な道具を取り出してにこりと微笑んでくる。細い金属製の棒で、真っ直ぐではなくところどころに緩い膨らみがある。
「あ、あの、それは……」
「ああ、これね。この間、お前に見せようとしてそのままになっていたヤツだよ。お前、あの時はさっさと爆睡しちゃって見せる暇もなかったからね」
「それは……すまなかったが、そんな棒にどんな使い道が……」
「それは実践しながら教えてあげるよ。その方がお前もすぐに覚えられるだろう?」
……何かものすごく嫌な予感がする。
更に兄は、いつぞやの太いボールチェーンまで用意し、こちらに見せつけてきた。
「ついでだからこれも一緒に使おうね。お前のお気に入りだし」
「き、気に入ってない! というか、そんな怪しい道具持ち出さないでくれ!」
「いいじゃない。今日はお仕置きプレイがメインなんだから」
「お仕置き!? だから俺はジーク様と浮気なんて」
「わかってるけど、やっぱり薄っすら気に食わないから今日はちょっと酷くしたいの。もう決めちゃったから、変更はできません」
「そんな……」
あんまりな言い分に、違う意味でめまいがしてきた。
さすがに言葉を失っていると、兄は一際目に力を込めてこちらを見下ろしてきた。
「それとも何? お前、私に抱かれるのは嫌なの?」
「っ……」
「どうしても嫌なら、無理にやるつもりはないよ。これはあくまでプレイであって、本物のお仕置きじゃないからね。多少はハードなことになるかもだけど、結果的にお前が気持ちよくなることしかしないし」
「…………」
「どうする? 私にやられるのは嫌? 答えなさい、アクセル」
「う……」
アクセルは唇を震わせた。
こんな聞き方されたら、答えはひとつしかないではないか。最初から拒否権なんてないではないか。
兄の言うことは絶対だと、今更ながら身に染みて思う。
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