1252 / 2197

第1252話

「えっ!?」  ぎょっとして目を見開いたが、兄の目は本気のようだった。  続けざま、懐から妙な道具を取り出してにこりと微笑んでくる。細い金属製の棒で、真っ直ぐではなくところどころに緩い膨らみがある。 「あ、あの、それは……」 「ああ、これね。この間、お前に見せようとしてそのままになっていたヤツだよ。お前、あの時はさっさと爆睡しちゃって見せる暇もなかったからね」 「それは……すまなかったが、そんな棒にどんな使い道が……」 「それは実践しながら教えてあげるよ。その方がお前もすぐに覚えられるだろう?」  ……何かものすごく嫌な予感がする。  更に兄は、いつぞやの太いボールチェーンまで用意し、こちらに見せつけてきた。 「ついでだからこれも一緒に使おうね。お前のお気に入りだし」 「き、気に入ってない! というか、そんな怪しい道具持ち出さないでくれ!」 「いいじゃない。今日はお仕置きプレイがメインなんだから」 「お仕置き!? だから俺はジーク様と浮気なんて」 「わかってるけど、やっぱり薄っすら気に食わないから今日はちょっと酷くしたいの。もう決めちゃったから、変更はできません」 「そんな……」  あんまりな言い分に、違う意味でめまいがしてきた。  さすがに言葉を失っていると、兄は一際目に力を込めてこちらを見下ろしてきた。 「それとも何? お前、私に抱かれるのは嫌なの?」 「っ……」 「どうしても嫌なら、無理にやるつもりはないよ。これはあくまでプレイであって、本物のお仕置きじゃないからね。多少はハードなことになるかもだけど、結果的にお前が気持ちよくなることしかしないし」 「…………」 「どうする? 私にやられるのは嫌? 答えなさい、アクセル」 「う……」  アクセルは唇を震わせた。  こんな聞き方されたら、答えはひとつしかないではないか。最初から拒否権なんてないではないか。  兄の言うことは絶対だと、今更ながら身に染みて思う。

ともだちにシェアしよう!