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第1270話

 食事の片付けもそこそこに、駆け足で世界樹(ユグドラシル)の前に向かう。  最新ランクが発表されたばかりだからか、そこにはたくさんの戦士(エインヘリヤル)が集まっていた。  ――って、これじゃ近づけないんだが。  普段なら「また後にするか」と出直すところだが、だいぶランクが上がっていたという話だったから、今すぐランクを確認したい。  こうなったら、何とか人を掻き分けて見える位置まで進むしかないか。でも、それで変なトラブルに発展したら困るし……。 「あれ、アクセルじゃん。久しぶりだねー、元気だった?」  人混みに突入すべきかどうか迷っていたら、横から誰かが話しかけてきた。同期のチェイニーだった。 「チェイニーか。本当に久しぶりだな。きみもランキングのチェックに来たのか?」 「そうだけど、オレはもうチェック済んだから帰るところだよ。アクセル、かなりランク上がってたじゃん。頑張ってるんだなー」 「ありがとう。何位になったか気になるから、早く確かめたかったんだけどな……」  この混雑っぷりじゃ……と、掲示板前の人混みに目をやる。  兄だったら、「ちょっとごめんよ」と声をかけるだけで自然と人が道を開けてくれるのだが、アクセルの場合はそうではない。影が薄いのか舐められているのか、頑張って声をかけても無視されることが多いのだ。それどころかあらぬ方向に押し退けられたり、「生意気だ」と突き飛ばされたりすることも少なくない。  なので、強引に人混みに突入するのはちょっと勇気がいるのだ。  するとチェイニーは軽く笑いながら、一枚の紙を差し出してきた。 「ああ、じゃあランキング表一枚あげるよ。上位一〇〇名しか載ってないけど、アクセルには関係ないっしょ」 「? ランキング表なんて発行されてたっけ?」 「混雑緩和のために、今回から数枚発行するようになったみたいだぜ? 本当は全ランクを載せて欲しかったのに、変なところでヴァルキリーが仕事をサボッたらしいね。混雑の原因になってるのは中堅~下位ランカーなんだから、そこ省略したら意味ないのにな」

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