1274 / 2195

第1274話

「よくないよ。咄嗟の勢いで手が出ただけでも、減点の対象になっちゃうんだろ? いくら飛び道具オンリーのルールでも、そんなことされたらバトルが成り立たないじゃないか。ヴァルキリーにクレームつけてやる」  そうむくれていたら、兄は笑いながら宥めてきた。 「そこまで怒らなくてもいいんだよ。三位から四位なんて大した降格じゃないんだから。そんなことより私は、お前のランクアップをお祝いしたいな。二桁突入おめでとう」 「……それもあまり喜べない気がするんだが。上の連中が軒並み減点されたから、相対的に俺のランクが上がっただけだろ? 中身が伴ってないランクアップはめでたくないよ」 「またそんなお堅いことを。上がったのは事実なんだから、おこぼれでも便乗でも、素直に喜んでおけばいいのさ。それに、お前の実力なら九十七位は妥当なところだと思うよ。狂戦士モードにもなれるし、回避率も高いしね。苦手な分野は多いけど、自分の得意分野だったら十分な実力がある」 「……そうかな」 「そうだって。とにかく、ランクアップおめでとう。今日はごちそう作ってお祝いしなきゃね」  そう言って、兄は上機嫌にキッチンに入っていった。保管庫にあった食材を全部外に出し、何を作るべきかあれこれ考えている。  ――兄上のことだから、また肉たっぷりの料理になるんだろうな……。  遠くで苦笑しつつ、アクセルは言った。 「じゃあ俺、庭で鍛錬してくるよ。出掛けるようなら声かけてくれ」  愛用の二刀小太刀を両手に持ち、ベランダから庭に下りる。  途端、ピピが軽快に駆けてきて、ふわふわの身体を擦り寄せてきた。 「やあピピ。今日も一緒に鍛錬してくれるか?」 「ぴー♪」 「ありがとう。じゃあウォーミングアップも兼ねて、軽く走り込みだな」  適当に準備体操をして、アクセルは反時計回りに庭をランニングした。

ともだちにシェアしよう!