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第1274話
「よくないよ。咄嗟の勢いで手が出ただけでも、減点の対象になっちゃうんだろ? いくら飛び道具オンリーのルールでも、そんなことされたらバトルが成り立たないじゃないか。ヴァルキリーにクレームつけてやる」
そうむくれていたら、兄は笑いながら宥めてきた。
「そこまで怒らなくてもいいんだよ。三位から四位なんて大した降格じゃないんだから。そんなことより私は、お前のランクアップをお祝いしたいな。二桁突入おめでとう」
「……それもあまり喜べない気がするんだが。上の連中が軒並み減点されたから、相対的に俺のランクが上がっただけだろ? 中身が伴ってないランクアップはめでたくないよ」
「またそんなお堅いことを。上がったのは事実なんだから、おこぼれでも便乗でも、素直に喜んでおけばいいのさ。それに、お前の実力なら九十七位は妥当なところだと思うよ。狂戦士モードにもなれるし、回避率も高いしね。苦手な分野は多いけど、自分の得意分野だったら十分な実力がある」
「……そうかな」
「そうだって。とにかく、ランクアップおめでとう。今日はごちそう作ってお祝いしなきゃね」
そう言って、兄は上機嫌にキッチンに入っていった。保管庫にあった食材を全部外に出し、何を作るべきかあれこれ考えている。
――兄上のことだから、また肉たっぷりの料理になるんだろうな……。
遠くで苦笑しつつ、アクセルは言った。
「じゃあ俺、庭で鍛錬してくるよ。出掛けるようなら声かけてくれ」
愛用の二刀小太刀を両手に持ち、ベランダから庭に下りる。
途端、ピピが軽快に駆けてきて、ふわふわの身体を擦り寄せてきた。
「やあピピ。今日も一緒に鍛錬してくれるか?」
「ぴー♪」
「ありがとう。じゃあウォーミングアップも兼ねて、軽く走り込みだな」
適当に準備体操をして、アクセルは反時計回りに庭をランニングした。
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