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第1277話
――まあ、祝ってくれるだけありがたいかな。
ちょっと苦笑し、アクセルは太刀筋矯正の素振りを続けた。
そのまましばらく素振りをしていたら、
「あ、アクセル。本当に鍛錬してるなんて、真面目だねー」
庭にチェイニーが入ってきた。先程会ったばかりだが、今度は一体何の用だろう。
「どうしたんだ? 兄上に何か用か?」
「いやいや、フレイン様に用なんかないって。予定表を渡し忘れてたから、郵便ポストに入れとこうと思っただけさ。でもアクセルがいるなら、直接渡した方が確実だと思って」
「ああ、そういうことか。ありがとう、いろいろすまないな」
「これくらいどうってことないって。ところでフレイン様は何してるの? また遊びに行っちゃったとか?」
「いや、市場に買い物に行ってるんだ。食材はいっぱいあるはずなんだけどな、なんか張り切っちゃって」
「なるほど? 弟のランクアップがよっぽど嬉しいわけか。ホント、どこまでも愛されてるね」
「ま、まあそれはな……。時々もったいないようにも感じるが、こんな俺でも愛してくれて本当に幸せだよ」
そう言ったら、何故かチェイニーは複雑そうな顔をした。はて、何かマズいことでも言っただろうか。よくわからない。
「おおおーい! アクセル、いるかー?」
そこへ、今度はアロイスがやってきた。どういうわけか、彼は荷台を引いており、しかもその上にスープの鍋らしきものを乗せている。一体何しに来たのだろう。
「ランキング表見たぜー! 九十七位に入ってたじゃん! めでたいなー! というわけで、これお祝いな」
アロイスが、荷台のスープ鍋をこちらに差し出してくる。スープ鍋自体は、それなりに使い込まれた中古製だった。
「……え?」
お手製のスープでも作ってきてくれたのかと思ったが、違った。鍋の中は何故か空っぽだった。
「ええと……これはどういう意味だ?」
困惑して聞き返すと、アロイスは当たり前のような口調でこう言った。
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