1277 / 2195

第1277話

 ――まあ、祝ってくれるだけありがたいかな。  ちょっと苦笑し、アクセルは太刀筋矯正の素振りを続けた。  そのまましばらく素振りをしていたら、 「あ、アクセル。本当に鍛錬してるなんて、真面目だねー」  庭にチェイニーが入ってきた。先程会ったばかりだが、今度は一体何の用だろう。 「どうしたんだ? 兄上に何か用か?」 「いやいや、フレイン様に用なんかないって。予定表を渡し忘れてたから、郵便ポストに入れとこうと思っただけさ。でもアクセルがいるなら、直接渡した方が確実だと思って」 「ああ、そういうことか。ありがとう、いろいろすまないな」 「これくらいどうってことないって。ところでフレイン様は何してるの? また遊びに行っちゃったとか?」 「いや、市場に買い物に行ってるんだ。食材はいっぱいあるはずなんだけどな、なんか張り切っちゃって」 「なるほど? 弟のランクアップがよっぽど嬉しいわけか。ホント、どこまでも愛されてるね」 「ま、まあそれはな……。時々もったいないようにも感じるが、こんな俺でも愛してくれて本当に幸せだよ」  そう言ったら、何故かチェイニーは複雑そうな顔をした。はて、何かマズいことでも言っただろうか。よくわからない。 「おおおーい! アクセル、いるかー?」  そこへ、今度はアロイスがやってきた。どういうわけか、彼は荷台を引いており、しかもその上にスープの鍋らしきものを乗せている。一体何しに来たのだろう。 「ランキング表見たぜー! 九十七位に入ってたじゃん! めでたいなー! というわけで、これお祝いな」  アロイスが、荷台のスープ鍋をこちらに差し出してくる。スープ鍋自体は、それなりに使い込まれた中古製だった。 「……え?」  お手製のスープでも作ってきてくれたのかと思ったが、違った。鍋の中は何故か空っぽだった。 「ええと……これはどういう意味だ?」  困惑して聞き返すと、アロイスは当たり前のような口調でこう言った。

ともだちにシェアしよう!