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第1280話
「なるほどな……」
「んじゃ、オレは例のスープ注文してくるから、アクセルは適当なとこ座ってて」
言われた通り、アクセルは空いているテーブルを探して椅子を引いた。
テントの数を数えてみたら二〇個以上は立っており、豆のスープに限らず様々な料理を食べられるようになっているみたいだった。
ヴァルハラの戦士は出身国や時代が千差万別だから、メジャーな料理からマイナーな創作料理まで、幅広く取り扱う必要があるらしい。それでこんなにテントが多いのか。
――ということは、俺たちの故郷の味もどこかで再現されてるのかな……。
ふと、故郷の村のことを思い出す。
故郷と言ってもそんなに濃密な思い出はなくて、ただひたすら鍛錬に明け暮れる日々だった。
特にアクセルが住んでいた地域は周辺国との小競り合いが多く、何かというとすぐに出陣させられていたので、一年の半分以上は家を空けていたように思う。
それでも、兄と一緒に暮らした質素な家のことは覚えており、時折「あそこは今どうなっているだろう」と頭によぎることもあった。今も村の端に残っているだろうか。それとも取り壊されて更地になっているだろうか。
もっとも、ヴァルハラと地上とでは時の流れが違うから、仮に故郷の様子を見に行ったところで全く違う町に生まれ変わっている可能性もあるのだが……。
「おまたせー! 豆のスープ買ってきたぞ」
チェイニーが皿を二つ持って戻ってくる。作りたてなのか、湯気がほかほか浮かんでいた。色は白で、豆乳がベースになっていると思われる。
「へえ、これが……」
もらったスプーンで中をかき混ぜ、具の有無を確かめてみた。
豆がごろごろ入っているのかと思いきや、出てくるのは刻んだニンジンや玉ねぎばかりで、豆らしい豆は入っていない。それでも豆の味はするから、豆を潰してペースト状にし、それを豆乳で伸ばして丁寧にこしているみたいだった。
美味しいことは美味しいが、いざ作ろうとしたらかなりの時間と手間がかかりそうである。
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