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第1281話
「……アロイスめ、本当に豆のスープが飲みたいならここに来た方が早いんじゃないか?」
「まあそこは、誰かに作ってもらいたかったのかもよ? お祝いだと思って作ってやれば?」
「うん……一応チャレンジはしてみるけどな。念のために、店主からレシピ教えてもらっておいた方がいいかもしれない」
材料や作り方を間違えて、全然違うものを作ってしまったら困るし……などと考えていると、
「おや。お前、こんなところで何してるの?」
「ふぁッ!?」
いきなり後ろから兄に話しかけられ、びくっと肩が震えた。あまりに驚いたので、飲んでいたスープを噴きそうになった。
「あ、あ、兄上!? なんでここに……」
「なんでって、市場で買い物するって言ったじゃない。市場ってすぐそこだし」
「そ、そうだな……」
「そんなことより、お前はなんでここにいるの? 家で鍛錬してるんじゃなかったっけ?」
「え、あ、いや……これは、その……」
そう問われ、だらだらと冷や汗が出てくる。
――マズい……浮気だと思われたかも……。
アクセルは豆のスープを味見するつもりで、このフードコートに来た。それ以上の理由はない。
でも兄からすれば、「鍛錬するって言っていたのにこっそり家を抜け出して、知らない人と勝手に食事している弟」のように見えたのではないか。兄の目を盗んで浮気しているように見えたのではないか。
説明しようにも一言では説明しづらくて、頭の中がパニックになってしまう。
やっぱりリサーチは今度にして、今日はおとなしく鍛錬しておけばよかった……!
「まあいいや。夕飯までにはちゃんと帰ってきなさいよ?」
「…………えっ?」
内心びくびくしていたら、思いも寄らない言葉を投げかけられ違う意味で固まってしまった。一瞬、何を言われたか理解できなかった。
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