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第1284話
「あの、兄上……」
アクセルは恐る恐る話しかけた。何から話していいかまだまとまっていなかったが、とりあえず説明はしなければと思った。
「さっきの食事だけど……あれはあくまでリサーチのためだからな? アロイスに豆のスープ作ってくれってねだられたから、その味見のために出掛けただけだからな? 決してそれ以外の意味はないからな?」
「ああ、そうだね。そんなことより、何か献立リクエストしてよ。野菜多めがいいなら野菜スープでも作ってあげるからさ」
聞いているのか聞いていないのかわからないような反応に、ますます不安になって言葉を重ねた。
「あの……本当にわかっているのか? 俺が出掛けたのは事情があって……」
「わかってるってば。お友達と食事してたくらいで、変なこと勘繰ったりしないよ」
「…………」
「というか、私がそんな小さなことでいちいち嫉妬するような男に見えるのかい? お友達と食事するなんて当たり前のことだし、私に何も言わずに出掛けたって別に怒ったりしないよ。いい大人なんだから、余程変なところに行かない限りは自由にしていいと思う」
「それは……」
「それとも、そうやって一生懸命言い訳するってことは、やっぱりやましい気持ちがあったってこと? 私に『浮気だ』とみなされるくらい、怪しいことをしてたってこと?」
「ち、違う! それは絶対にない!」
強い口調で否定する。
浮気するなんてまずあり得ないし、そもそも自分は兄以外の人は眼中にない。やましい気持ちなど抱く余地はないし、今後も誰かに気持ちが移ることはあり得ないだろう。
――むしろ俺の方が、兄上に愛想を尽かされないか心配しなきゃいけないくらいなのに……。
すると兄はにこりと微笑み、こう言ってきた。
「だったらいいじゃない。お前は浮気してないし、私も気にしていない。これ以上言うことはないでしょ。……まあ、どうしても不安だっていうならあえてお仕置きしてあげてもいいけど」
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