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第1285話

「えっ!? い、いや、それは……」 「ふふ、希望するなら夜までに考えておいてね。……で、結局夕飯はどうするの? さっきスープ食べてたし、軽めにする?」 「あ、ああ……そうだな……」  アクセルは曖昧に返事をした。これといって食べたいものはなかったが、せっかく兄がたくさん食材を買ってきてくれたのだから、何かリクエストしないと申し訳ないような気がした。  とりあえず野菜多めのピザを頼み、アクセルは再び庭に出た。無心で身体を動かしていないと、モヤモヤした気持ちも晴れないと思った。  ――これはもう、考え方の違いだと割り切るしかないのかな……。  アクセルは、自分が知らない間に兄と友人(特にジーク)が二人きりで食事していたらものすごく嫌な気持ちになる。  それこそ、自分が棺で寝ている間に自宅で勝手に食事された時は、冗談抜きでブチ切れたものだ。「何で俺がいない間にそういうことするんだ!」と兄をぶん殴った。  でも兄は、知らない間に友人と食事していても何とも思わないらしい。自分がやっているからアクセルに対しても寛容なのか、基本的に「友達はあくまで友達でしかないから、一緒にいたくらいで浮気にはならない」と考えている。  ――なんか、俺の心が狭いだけのような気もしてきた……。  こんな風に、いちいち浮気のことを心配してしまう自分も嫌になる。兄みたいに細かいことは気にしない性格が羨ましい。  軽く溜息をつき、アクセルは愛用の二刀小太刀を抜き放った。そして半ば八つ当たりのように柱の間で素振りをしまくった。  心が乱れていたせいか太刀筋も乱れてしまい、何度も柱に刃が噛んでボロボロになってしまった。まったく、いろんな意味で情けない……。  その後はなるべく余計なことを考えずに済むよう、無心でトレーニングに励んだ。ひたすら走り込んで素振りをして筋トレをして……とやっていたら、夕食の頃には既にくたくたになっていた。

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