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第1286話

「おや、随分疲れているじゃないか。そんなに熱心にトレーニングしてたのかい?」  と、兄がハチミツ入りレモン水を差し出してくれる。 「ペースを考えずにトレーニングすると、翌日身体がバキバキになるよ。毎日同じようにトレーニングするのが一番だ」 「そ、そうだな……」  気持ちが晴れなかったため、あえて根詰めてトレーニングしたのが裏目に出たか。こういうことがある度に、本当に自分は未熟だと痛感する。  せっかく兄が生地から作ってくれた野菜のピザも、疲れていたせいか半分しか食べられなかったし……。  ――何してるんだ、俺は……。  なんだかどんどん自分が嫌になってきた。小さなことでぐちゃぐちゃ悩んでいる自分も嫌だし、なかなか気持ちに区切りをつけられないことも、それによっていろんな場面に悪影響を及ぼしているのも嫌だった。 「お前、さっきから何を悩んでいるの?」  見かねた兄が探りを入れてくる。 「なんかやたらと雰囲気が暗いけど。またいつもの『風邪』が出たのかい?」 「風邪、か。そうかもしれないな……」 「風邪だとしたら、私は何もしない方がいいのかな? それとも、話くらいは聞いた方がいい?」 「……いや、話を聞いて欲しいわけじゃなくて……」  自分でもどうしたいのかわからなくなってきた。  ただ、このまま一人で寝ても明日の気分は晴れないだろうし、だからといってこれ以上気持ちを引きずるのも御免だった。その日に起きた悩みは、なるべくその日のうちに解決したい。 「兄上、お仕置きしてくれ」 「……えっ?」  唐突な申し出に、さすがの兄も目が点になった。パチパチと目をしばたたき、こう聞き返してくる。 「ええと、お仕置きってそっちのお仕置き? お前、今日はそういう気分なの?」 「そういう気分なんだ。このままじゃモヤモヤして眠れないから、思いっきりひどくされて気絶するように眠りたいんだ」

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