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第1288話
「最初に言っておくけど、私にだって嫉妬心はあるからね。むしろ嫉妬の塊かもしれない。お前が誰かにちょっかい出された時なんか、問答無用で斬り捨てたくなるもの。本当に嫉妬しない人だったら、そういうのも全部スルーできるはずだよ」
「……けど、チェイニーと食事してた時は何も言わなかったじゃないか」
「それはチェイニーくんがライバルにならないからだよ。でも、例えばアレがジークだったら、私はその場で抜刀していたかもしれない」
また引き合いに出されて気の毒だが、確かにジークが相手だったら兄も物凄い勢いで嫉妬しそうな気がする。それだけジークはいい男すぎるのだ。
兄は続けた。
「お前は私の可愛い弟。他の男には絶対に渡さない。ただ、『この人には盗られないだろう』って思っている人には嫉妬しないだけでね。だいたい、『小さなことでヤキモチ焼いちゃう』なんて言ったら、私なんかそこら辺の男がお前に話しかけただけで『何か下心があるのか』って勘繰っちゃうんだよ? そっちの方が心が狭いでしょう」
「いや、それは俺の危機意識が薄いせいだと思うが……」
どういうわけか、アクセルに話しかけてくる連中は妙なことを企んでいる場合が多い。誤解されたまま娼館まで連れて行かれたり、騙された挙げ句殴られて組み敷かれたこともあった。
いずれもとんでもないピンチだったが、肝心の自分は追い込まれるまで危険に気づかないため、兄が警戒してくれた方が安全なのである。
「まあとにかくさ……私はお前が考えているような聖人君子じゃないってこと。嫉妬もするし、くだらないことで疑ったりもする。そこはお前と同じだよ」
「兄上……」
「だからお前も、嫉妬の有無で悩むのはやめなさい。全く嫉妬しない人なんかいないんだから。ヤキモチ焼いちゃったら、隠さず素直に焼けばいい。お前が『浮気だ!』と思うならハッキリ言えばいいし、私は一度受け止めるよ。私にとっては浮気にならないことでも、お前を不安にさせたのは事実だからね」
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