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第1289話

「…………」  そんなことを言われたら、余計にたまらなくなってきた。  アクセルは正面から兄に抱きつき、割れた声で訴えた。 「兄上ぇ……」 「はいはい、どうしたんだい?」 「俺……本当に自信がなくて……。兄上に見つかった時から、不安で不安でしょうがなくて……」 「見つかったって、お友達と食事してたところを? 何度も言うけど、私はそんなことで浮気だなんて思わないよ。それとも、怒ってあげた方がよかった?」 「だって俺だったら怒ってるから……。鍛錬してるって言ったのに勝手に外出した挙句、友達と二人きりで食事だなんて……。俺は全然そんなつもりなかったけど、浮気って思われてもおかしくないなって……」 「なるほど」 「でも兄上、ほとんど何も言わなかったから……それで余計に不安になっちゃって……。もしかしたら、怒るのも面倒になるくらい呆れられちゃったのかもって……。今度こそ愛想を尽かされちゃったんじゃないかって……。そう思ったら、どうしていいかわからなくなって……」  そう言ったら、兄は宥めるようにこちらを抱き締め、優しく頭を撫でてくれた。  こんな自分の訴えを、兄はいつも黙って耳を傾けてくれる……。 「……だから、まずはちゃんと説明しなきゃと思った。それで、すぐに帰って兄上に事情を説明しようとした。でも兄上は笑ってスルーするだけで、全然咎めてこないし……。それで余計に焦って、もう一度説明しようとしたけど……そんなことをすればするほど、自分が言い訳しているように見えてきて……余計にモヤモヤしてしまって……」 「うんうん……」 「元はと言えば、俺が勝手に出掛けちゃったのがいけないんだ……。兄上は俺のために夕食の買い出しに行ってたのに、肝心の俺は浮気っぽいことをしている……。一心不乱に鍛錬しても気持ちは晴れなかったから、こうなったら兄上にひどくお仕置きしてもらうしかないと思って、それで……」

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