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第1292話

「あの……今日は……その……」 「うん」 「お仕置きして欲しい気もするが……いや、お仕置きじゃなくていいんだが……でも、普通にやってもらったところで、ついていける自信も……」 「…………」 「うう……」  赤面しながら言葉に迷っていたら、兄が唐突に両肩を掴み、くるりと向きを変えてきた。そしてこちらの背中を押し、浴室前まで連行していった。 「あ、兄上?」 「とりあえず、シャワー浴びて落ち着こうか。お前は動揺すると意味不明なことを言いがちだからね。一度冷静になって、出てきた時にまだそういう気分だったら、私のベッドに入って待っておいで」 「あ、はい……わかりました……」  そのまま兄は脱衣所を出て行く。  残されたアクセルは、バサッと服を脱いで浴室に入った。未だに頬が熱かったので、あえて冷水を頭から被ることにした。  ――ああもう……今日の俺、恥ずかしいことしまくってる……。  言動も恥ずかしければ、未熟な自分の精神も恥ずかしい。兄からすれば「何でそんなことで悩んでいるんだろう」と呆れる案件だろう。いや、実際呆れられていたのだが。 「……どうしたらもっと強くなれるんだ……」  鍛錬はしているので、腕っぷしは……少しずつ強くなっているように思う。  でも小さなことでウジウジ悩んでしまう性格は、そう簡単には治らない。兄はこんなに自分のことを愛してくれているのに、肝心の自分がこんな有様では申し訳なさすぎる。  ――それもこれも、自分に自信がないことが原因か……。  冷水を浴びていたらだんだん寒くなってきたので、少しずつ温度を上げていった。  それと同時に頭も冷静になってきたので、「だけど」と考え直す。  ――俺が自信を持てないままじゃ、愛情を注いでくれる兄上に失礼なんじゃないか……?  自分に自信が持てないあまり「こんな俺じゃいつか愛想を尽かされちゃうかも」と考えてしまうことはある。  が、それはつまり兄の愛情を疑っていることになるんじゃないか。自分を好きでいてくれる兄を、否定していることに繋がるんじゃないか。

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