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第1293話
――そうだな……それが一番の冒涜だ。
もっとシンプルに考えよう。兄は自分を愛してくれているし、自分も兄が大好きだ。それで十分。「愛される資格が~」とか、「愛想を尽かされるんじゃ~」とか、そういうことは考えなくていい。
そうやって気持ちを疑うことが、最も失礼な行為なのだから……。
「……ふう」
心の迷いまで全部洗い流し、アクセルは浴室を出た。就寝着を纏い、コップ一杯分の水分をとってから寝室に向かう。
「…………」
当然のことだが、寝室には兄と自分のベッドがひとつずつ並んでいる。
兄は「その気があったら私のベッドに入って待ってて」と言っていたが、さてどうしよう……。
「…………」
ベッドの前で五分くらい悩み、結局アクセルは躊躇いがちに兄のベッドに潜り込んだ。恥ずかしかったので掛け布団を頭から被り、顔を壁側に向けて隠れておく。
何度経験しても、この手の行為はやはり恥ずかしい。自分から誘うとなれば尚更だ。
「おや、やっぱり待っていたのかい?」
タイミングよく兄がやってきて、当たり前のようにベッドに入ってきた。兄はやる気満々だったのか、最初からバスローブを着ている。
「それにしても、あんなに大胆に『お仕置きしてくれ』って言ってきたのに、いざ冷静になると途端に恥ずかしくなるって……お前もなかなかの不思議ちゃんだね。そこまで言っちゃったなら、もう恥ずかしいことなんてないでしょ」
「そ、そういう問題じゃないんだよ……」
だいたいあの時は、ちょっと冷静じゃなかったし……と付け加えると、兄はにこりと微笑んできた。
「そうかい? まあ、そういうシャイなところもまた可愛いけどね。お前が堂々とし始めたら、それはそれでいじめ甲斐がないというか」
「いや、いじめないでくれよ……」
普段は優しくて弟想いの兄だが、こういう時は何故か思いっきり辱めてくる。頼んでいないのにお仕置きっぽいプレイに発展することもある。
それでも、愛情だけはたっぷり注がれるから拒否はできないのだが……。
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