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第1303話
アロイスは太い丸太で素振りをしており、振り下ろした重みで身体が吹っ飛びそうになっていた。なんであんな無茶なトレーニングばかりしているんだか……。
「アロイス、ちょっといいか?」
「お? アクセル、どうしたんだ? また丸太が欲しくなったのか?」
ドスン、と持っていた丸太を床に置く。はずみで床にメリッと穴が空いた。外で素振りすればいいのに、なんで室内でやっているのか。意味がわからない。
「ええと……頼まれていたスープ、作ってきたぞ。出来立てだから、早いうちに食べた方がいいと思う」
「おおっ、マジか! サンキュー! 早速いただくぜ!」
アロイスはサッと奥に引っ込んで、自分用のスープ皿とスプーンを持ってきた。
そしてスープを大盛りにし、一人でガツガツ食べ始めた。
「うおぉぉ! 美味い! 美味いぞ、これ! さすがアクセル、料理上手いな!」
「よかった。そこまで喜んでくれたら、こっちも作った甲斐があったよ」
「いやぁ、思い切ってリクエストしてよかったぜ。ありがとな。オレの故郷の味とはちょっと違うけどさ」
「…………え?」
言われて、アクセルはアロイスに目をやった。こんなに美味しそうにスープを味わってくれているのに、「故郷の味と違う」とはどういうことだ? 味見もしたし、失敗はしてないはずなのだが……。
「え、違うってなんだ? これが豆のスープって聞いたんだが」
「豆のスープってのは合ってるけど、味付けがなんか違うんだよな。おふくろが作ってくれたのは、なんつーか……もっとすっぱい感じがしたんだよ。もしかしたらおふくろ、何か別の物を入れて独自のアレンジをしてたのかもしれん」
「アレンジか……」
「いや、もちろんこれはこれで美味いよ。ここまで作ってくれたら、オレはもう満足だぜ」
一人で半分以上平らげ、アロイスはようやく鍋の蓋を閉じた。
そして床にめり込んだ丸太を再び持ち上げ、素振りを再開しようとする。
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