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第1304話

「今度の死合いも頑張ろうな! 一緒に一桁ランクを目指そうぜ!」 「あ、ああ……そうだな……。でもその素振りは外でやった方がいいぞ……」  また一人で素振りに熱中してしまったので、仕方なくアクセルはそのまま家に戻った。  が、目的は達成したのにモヤモヤした気持ちは消えない。  ――なんというか、ちょっと悔しいな……。  喜んでくれたのはよかったが、結局「おふくろの味」とやらを完全に再現はできなかった。  わざわざフードコートまで味の調査をしに行って、兄とひと悶着あって、その上でようやく完成したスープだったから、「違う」と言われて地味にショックだった。  ――どうせなら、完璧に再現したものを食べさせてやりたい……。  こうなったら意地だ。自分がここまでやってやる義理はないのだが、このまま引き下がるのも後味が悪い。  ちょうとミキサーも欲しいと思っていたし、食材もいろいろ見繕ってこよう。  そう思い、アクセルは市場に寄ってから家に戻った。ミキサーの他に豆のスープの材料を見て回り、酸味になりそうなレモンやお酢なども一緒に購入した。 「さて、と……」  帰宅してすぐ、アクセルは購入したものをキッチンに並べて鍋に水を入れた。そして適当に豆を茹で、茹で上がった豆と少量の豆乳をミキサーにぶち込み、一気にガーッと粉砕した。  固形物だった豆がものの数秒で液状になってしまい、その便利さに舌を巻いた。  ――すごいな……これなら毎回、手で豆を濾さなくて済む。  他にも食欲がない日の朝なんかは、野菜や果物を磨り潰してスムージーを作れるかもしれない。これはなかなか重宝しそうだ。買ってよかった。 「ただいまー」  黙々とスープを作っているところに、兄が帰ってきた。  兄は当たり前のようにキッチンに入ってきて、水分補給をしながら言った。 「おや、スープ作りかい? 頑張ってるねぇ」 「ああ。どうせなら完璧に再現したスープを作りたいからな。『なんか違う』って言われたままじゃ、悔しいだろ」

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