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第1307話

「もちろん、普通に会話する友人はいたよ? でもホラ……今日元気だった人が、明日も元気で生きているとは限らないからさ。特定の人と親しくしすぎて、その人が戦死でもしたらショックでしばらく戦えなくなるじゃない? だからあえて、親友みたいな人は作らないようにしてたんだよね」  なるほど、その気持ちは理解できる。  親友とは違うが、自分も兄を亡くした時はしばらく立ち直れなかった。あのまま一緒に死んでしまいたかった。  でも最期に兄が「ヴァルハラで待ってる」と言ったから、半ば廃人になりながらも戦いに復帰できたのだ。それがなかったら、当たり前のように後追いしていた気がする。  それだけ、大事な人を失うのは精神的な負担が大きいということだ。 「……俺、ヴァルハラに来られてよかった」 「私もだよ。大きくなったお前に会えたし、ここでなら破魂されない限り永遠に生き続けられる。歳もとらないし、最高だよね」  兄が横からこちらを抱き締めてきたので、アクセルも軽く抱擁を返した。大好きな兄とずっと一緒にいられて、自分は幸せ者だ。それだけでもヴァルハラに来た甲斐がある(兄を亡くしてから戦死するまでの十数年は、どう生活していたのかあまり覚えてないけど)。 「それで、アロイスくんのお母さんはどうする? 会いに行ってみる?」 「ああ、そうだな。アロイスが行けないなら、俺が代わりに行って『おふくろの味』を覚えてくるよ」 「おっけー! じゃあ申し込みしてくるね。申請が通れば出掛けられるようになるから、それまでに地上でのルールを頭に入れておくんだよ」  そう言って兄は、自分の部屋から小冊子を持ってきてこちらに渡してくれた。見ればそこには「地上に降りる際の決まりごと」がズラリと書かれていた。どうやらこれも、ヴァルキリーが発行したものらしい。こんなの初めて見た。  ――だから……こういう冊子があるなら、ちゃんと全員に配ってくれよ……。

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