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第1308話
これもヴァルキリーの仕事が杜撰な理由のひとつだが、情報を周知させる気がないのは本当に困る。存在を知らないまま解決方法がわからず、いつまでも悩む羽目になるとも限らないではないか。
こういう対応を見ていると、何というか……ヴァルキリーたちは真面目にヴァルハラを管理する気がないのではと思ってしまう。せめて配布物は、きちんと全員に行き渡るようにして欲しいものだ。それができないなら、自治権をこちらに渡して欲しい。
「ありがとう、しっかり読んでおくよ。……申し込みのついでに、ヴァルキリーに苦情を入れてくれると助かる」
「あー……そうだね。いち戦士 がクレーム入れたところで、彼女たちの管理体制はきっと変わらないけど。……じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
兄はすぐさま家を出て行った。残されたアクセルは弱火で再びスープを煮込み、その間に飲み干してしまったハチミツ入りレモン水を作り置きした。ハチミツ入りレモン水はトレーニングの水分補給にも欠かせないから、たくさん作っておかないとすぐになくなってしまう。
このスープも作る必要ないのかもしれないが、このまま放置しておいても食材の無駄なのでとりあえず最後まで作ることにした。
――アロイスのお母さんか……どんな人なのかな……。
アロイスがあのように豪快で細かいことを気にしない性格だから、その母親もおおらかな肝っ玉母ちゃんかもしれない。もちろん親子で全く似てないこともあるが、たくさん兄弟がいたという話だし、きっと面倒見もいいタイプだったのだろう。
アロイスが「おふくろの味」にこだわっているのも、母への思い入れが強いからに違いない。
――そんなお母さんだったら、もう一度会いたいだろうな……。
スープを煮込みつつ、ルールが書かれた小冊子をパラパラ眺める。
そこには細かいルールがいくつも記載されていたが、一番重要なルールに「関係者に干渉しないこと」とあった。
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