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第1311話

「まあそんなに怒らないでさ。とにかく、申し込みしてきたから数日後には許可が出されると思うよ。それまでに、ルールを頭に入れておこうね」 「……わかったよ」 「あ、そのスープ私も食べるからとっといてね。いつものスープ皿に大盛りで頼むよ」 「はいはい……」  兄は相変わらず食欲旺盛なようだ。まあ、食欲がなかったらそれはそれで病気を疑ってしまうので、兄はこれくらいの方がいい気がする。 「さてと……」  十分野菜が煮えたところで、アクセルは火を止めた。自分の皿と兄の皿を用意し、それぞれの分をよそう。リクエスト通り、兄の皿は大盛りにしておいた。残りはピピのおやつにしよう。 「兄上、スープできたぞ。ここに置いておくからな」 「わあ、ありがとう。いただくよ」  兄がウキウキと食事テーブルにつく。美味しそうにスープを味わいながら、例のルールブックを片手で眺めていた。後で自分もしっかり読んでおかなくては。  アクセルはスープの残った鍋を抱えて庭に行き、ピピを呼んだ。 「ピピ、おやつだぞ」 「ぴ?」  こちらに近づいてきたピピが、庭に置かれたスープ鍋の中を覗き込む。ふんふんと匂いを嗅ぎ、いつものスープだとわかった途端ガツガツと食べ始めた。  そんなピピの食べっぷりを眺めながら、アクセルは話しかけた。 「なあピピ、俺たち近いうちに地上に小旅行するんだが、その間ピピはどうする?」 「ぴ……?」 「なるべく早く帰るつもりだけど、日帰りはちょっと無理かもしれないんだ。俺たちがいない間のご飯とか……誰かに頼もうか?」  ああ、そういうことか……と、ピピは顔を上げた。ちょっと首をかしげて考える素振りをし、たどたどしくこう答える。 「ピピ、やまにかえる。ピピのかぞくにあう」 「なるほど、ピピも里帰りか。それならちょうどいいかもしれないな」 「ぴー」 「そしたら、家族でゆっくりしてきていいぞ。もういいかなと思ったタイミングで、戻ってくればいい」  そう言ったら、ピピは嬉しそうに耳をパタパタ上下させた。

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