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第1313話

 世界樹(ユグドラシル)を抜けた後も紛らわしい道が続いており、注意して進まないと家も間違ってしまいそうだ。  どうしてもわからなかったら周囲の人に聞くしかないが……必要以上の会話は控えるようにとルールブックに書いてある。できれば自力で辿り着きたい。 「初めて行く場所だからね。土地勘もないし、迷っちゃうのは仕方ないよ。まあ私とお前だし、いざとなったらどうにでもなるって」 「まあそうなんだけどな。……それとは別に、ヴァルキリーの仕事が遅いのはちょっとイラッとした」  三日もあれば許可が下りると思っていたのに、結局許可証が手元に届いたのは十日後だった。  地図に道順を書き込む作業はあったのかもしれないが、それだってどう見積もっても十日はかからない。一体どんな仕事の仕方をしているのか、本当に呆れてしまう。あと少し遅かったら、クレームを入れているところだ。  すると兄は笑いながら言った。 「まあまあ、結果的にちゃんと許可が出たんだからいいじゃないか。私は、お前と旅行できるのすっごく嬉しいよ」 「それは……まあ、な」 「というか、お前と泊まりがけの旅行するのってほぼ初めてじゃない? 今まではやむにやまれずというか、成り行きの野宿とかが多くて、純粋な楽しみでどこかに行く機会は滅多になかったもんね」 「ああ……言われてみればそうかもしれない」  ヴァルハラでのお出掛けと言ったら、山登りか狩りか、洞窟の踏破くらいしかない。少なくとも、地上への旅行を娯楽にしている人は滅多にいなかった。  もちろん山登りしたり狩りをしたりするのも楽しいけれど、こうして地上を旅行するのは非常に新鮮でわくわくする。細かいルールはあるけれど、これはこれで思い出になりそうだ。  兄はこちらの手を握って、微笑んだ。 「いつか里帰りがOKになったら、私たちの故郷がどうなっているかも見てみたいね。知り合いには会わなくていいからさ、見つからないようこっそり町の様子を見て回りたいな」

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