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第1314話
「そうだな……。いつかそういうこともできたらいいな」
兄の手を握り返し、アクセルは一緒に世界樹 のゲートを通った。
世界樹 は何度か通ったことがあるが、中のゲートは以前よりずっと複雑になっていた。
様々な世界に行くことができるようになったため(死者の国とか神々の国とか)、その分道が増えてごっちゃになっているみたいだった。
「ええと……こっちだったか?」
「違くない? そのひとつ向こうの扉だよ」
「ええ……? そうなのかな……」
ヴァルキリーの用意した地図も、実にわかりにくかった。わざとわかりにくく書いているのではと疑いたくなるくらい、書き方が乱雑だった。こんなところにまで嫌がらせをしなくてもいいだろうに。
こっちでもないあっちでもないをひたすら繰り返し、どうにか目的のゲートを抜けることができた。ゲートを出て地上に下りた時には、辺りはやや薄暗くなっていた。
「はあ……どうにか抜けられた……」
「うん。抜けられたことは抜けられたけど、違う意味で抜けられてないかも」
「……え?」
キョロキョロと周りを見渡す。右も左も前も後ろも同じような木々が並んでいて、目印となりそうなものは何もなかった。
「……って、ここ森の中じゃないか! なんて場所を出口に指定してるんだよ!」
少なくとも、人が歩けそうな道はない。ほとんど手つかずの森の中に、いきなり放り込まれたような感じだ。これでは、どっちに進めばいいかもわからないではないか。
「なるほどね~。『人目につかないところ』って書いてあったけど、こういうところに出るわけか。これなら確かに、誰にもバレずに観光できるねぇ」
兄は呑気に笑っている。……いや、これでは観光以前に野垂れ死にそうなのだが。
――そりゃあ、俺だって賑やかな街中に出るとは思ってなかったけどさ……。
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