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第1315話
人通りの多いところにいきなりゲートが出現すると大騒ぎになるから、滅多に人の来ない裏道に出るのかなと思っていた。
でもまさか、こんな右も左もわからないような樹海を出口にされるとは。これではアロイスの実家どころか、森を抜けることもできないではないか。どうしてくれるんだ、ヴァルキリーどもめ!
かなり腹を立てていると、兄はにこやかに肩を叩いてきた。
「まあそんなに怒らないで。私は、これはこれでいいと思ってるよ。私とお前だったら、こういう森の中でも数日は過ごせるし。どうしてもダメなようだったら、転移石で帰ればいいんだしさ」
「それはそうだが、収穫ナシで帰るのはどうかと思うぞ。俺はアロイスのおふくろの味を知りたいんだ」
「お前はそうだけど、私はどっちでもいいんだよ。お前と旅行できれば満足だから」
と、呑気なことを言う兄。
微妙な顔をしていると、兄は急に真面目な口調でこう言ってきた。
「まあ何にせよ、地上で無理は禁物だ。すぐ泉や棺に入れるわけじゃないから、死ぬような大怪我はご法度だよ」
「……!」
「お前は何かに夢中になると、すぐに罠にかかる変な癖があるからね。地上では特に気を付けなきゃダメだ。目的を果たすことも大事だけど、『また今度でもいいや』くらいの軽い気持ちでいること。猪突猛進になるとロクなことがないしね」
確かにその通りだ。周りが見えなくなり、致命的なミスをした経験は山ほどある。その度に兄がフォローしてくれて、危ないところを何度も助けてもらった。
自分の都合で地上に下りたのに、また兄に迷惑をかけるわけにはいかない。棺や泉に入れないならなおさらだ。
アクセルはひとつ深呼吸をし、気持ちを落ち着かせて答えた。
「……わかった。肝に銘じるよ」
「よしよし、じゃあアロイスくんの実家を探そうか。距離的には決して遠くないと思うんだけどな」
兄が横から地図を眺めてくる。
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