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第1316話
アロイスは元木こりらしく、実家も森の近くにあるようだ。今いる森を抜けられれば、実家もすぐに見つかるだろう。
「太陽は……あっちか」
アクセルは木の陰の傾きから、太陽の位置をおおよそ割り出した。時間的に今は夕方間近みたいなので、太陽が落ちている方向が西側ということになる。それを踏まえて地図の向きを合わせれば、どちらに進めばいいかざっくりとわかるはずだ。
「……こっちかな」
「うん、多分そうだね」
と、兄も賛成してくれる。
「でも、この分じゃもうすぐ暗くなっちゃう。道が見えなくなったら、無理せず野宿しようね」
「……ああ、そうだな」
地図と方角をこまめに確認しつつ、アクセルは森の中を歩いた。兄もすぐ後ろからついてきた。
――森さえ抜けられれば、陽が落ちても問題ない。陽が落ちる前に、何とか森を抜けられればいいんだが……。
そんなことを考えながらひたすら歩を進めていると、
「おっと、危ないよ」
「ぐえっ……」
急に襟首を掴んで止められ、何事かと思った。
見れば、その場から一歩進んだ場所に落とし穴らしき罠があった。穴の上を土や枯れ葉でカモフラージュされていて、よく見ないと気付くことはできない。危うく、そのまま引っ掛かるところだった。
「ありがとう……。すまない、また迷惑をかけてしまった」
「いいよ。それより、ここに人工的な罠があるってことは定期的に人が通っているって証拠じゃない? もしかしたら、出口も近いのかも」
「あ、そうか……そうだよな」
「お前の地図読みが正しかったんだね。迷わずに済んでよかった」
そう言って、兄はこちらの背中を押して先に進むよう促した。
今度は慎重に歩きながら、アクセルは地図と道を交互に見た。
森の外にはいくつかの集落があって、そのうちのどこかにアロイスの実家があるはずだ。集落を一軒一軒探し回ることも考えれば、なるべく早く森を抜けたいのだが……。
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