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第1318話
「そういうものなのか……?」
「そういうものだって。お兄ちゃんに任せておきなさい」
半信半疑だったが、そこまで言うなら……と思い、情報収集は兄に任せることにした。
アクセルが後ろで見ている中、兄は帰宅していく通行人を捕まえては「アニータさんのおうちはどっちでしたっけ?」などと尋ねていき、何だかんだで実家を突き止めることに成功していた。
アロイスの実家は、森の出入り口のすぐ脇にある小さな平屋だった。今は夕暮れというのもあり、中で家族が大集合しているのが聞こえてくる。
「ちょっとあんた! 夕飯はまだだよ。勝手につまみ食いするなってあれほど言ってるだろう?」
「でも腹減ったんだよ。オレもう我慢できねぇ」
「母ちゃーん、また兄ちゃんがおもちゃとったー! しかも叩いてきたー!」
「またかい。くだらないことで喧嘩してるんじゃないよ」
「母ちゃん、割っておいた丸太がもう乾いてるぞ。薪にくべていいか?」
「ああ、いいんじゃないかい? ついでに風呂も沸かしておいてくれ」
……というようなやり取りが、外まで聞こえてくる。
「随分賑やかなおうちだねぇ」
兄が興味深そうに顎に手を当てる。
「アロイスくん、家族多いんだね。兄弟いっぱいいるのか」
「ああ……そんなこと言ってたな。確か本人は上から二番目とか言ってたような……」
「ふーん、そうなのか。何にせよ、楽しそうな家族だってのはわかったよ」
そう言って、兄は早速扉を叩こうと手を掲げた。
が、それとほぼ同時にガラッと扉が開き、十二、三歳くらいの少年と鉢合わせしてしまう。
「うわっ……!」
「おや、ちょうどいいタイミング。こんばんは。アニータさんはここに……」
「母ちゃん! 変なヤツが外にいる!」
兄が全部言い終わらないうちに、少年が大声で騒ぎ始めた。他の兄弟たちも、一斉にこちらに目を向けてきた。見たところ、この少年が一番の年長者らしい。
彼は扉の横にあったつっかえ棒らしきものを手に取り、威勢よくこちらに構えてきた。
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