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第1321話

「母ちゃんはアロイス兄ちゃんの強さを知らないから、兄ちゃんの凄さがわからないんだ! 兄ちゃんは凄いんだぞ! 母ちゃんが留守の時、うちに来た変なヤツを片っ端からボコボコにして……」 「何を言ってるんだい。結局あれは隣村の知り合いだったじゃないか。あの後私が何回頭を下げたと思ってるんだか」 「オレたちは知り合いを知らなかったんだ! 知らないヤツは変なヤツと同じだ! だから兄ちゃんがボコボコにしたんだよ! 兄ちゃんは強いんだ!」 「おだまり。知らない人だからって、いきなりボコボコにするバカがどこにいるんだい。そんなことより、さっさと風呂を沸かしてきておくれ」  体よくアニータに追い出され、ようやく室内は静かになった。  ――だいぶやんちゃだが、兄貴に憧れているのは本当みたいだな……。  アクセルにも、その気持ちはよくわかる。今も早く兄に追い付きたくて、がむしゃらに鍛錬しているところだ(それでも、未だに追い付けている気がしないが)。  あのアーダンとやらも、兄・アロイスを目標に強くなろうとしているに違いない。微笑ましいというか、親近感が湧く。 「それで、アロイスは元気でやってるのかい?」  アニータが母親らしいことを聞いてきた。 「あの子ときたら、最近は全然顔を見せてくれなくてねぇ……。手紙ひとつ寄越さないし、どうしちゃったもんだか。あんた達、あの子に会ったら『たまには顔を見せに来い』って言っておいてくれ」 「え、ええ……わかりました」  そう言ったものの、自分の母親に会うことは禁止されているのだが。  ――というかこのお母さん、アロイスがヴァルハラにいるって知らないのかな……。  ヴァルハラにいるということはつまり、もうこの世にはいないということだ。形はどうあれ、一度死んでいるということだ。  そんな大事なことを、母親が知らないのは違和感があるのだが……。

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