1321 / 2197
第1321話
「母ちゃんはアロイス兄ちゃんの強さを知らないから、兄ちゃんの凄さがわからないんだ! 兄ちゃんは凄いんだぞ! 母ちゃんが留守の時、うちに来た変なヤツを片っ端からボコボコにして……」
「何を言ってるんだい。結局あれは隣村の知り合いだったじゃないか。あの後私が何回頭を下げたと思ってるんだか」
「オレたちは知り合いを知らなかったんだ! 知らないヤツは変なヤツと同じだ! だから兄ちゃんがボコボコにしたんだよ! 兄ちゃんは強いんだ!」
「おだまり。知らない人だからって、いきなりボコボコにするバカがどこにいるんだい。そんなことより、さっさと風呂を沸かしてきておくれ」
体よくアニータに追い出され、ようやく室内は静かになった。
――だいぶやんちゃだが、兄貴に憧れているのは本当みたいだな……。
アクセルにも、その気持ちはよくわかる。今も早く兄に追い付きたくて、がむしゃらに鍛錬しているところだ(それでも、未だに追い付けている気がしないが)。
あのアーダンとやらも、兄・アロイスを目標に強くなろうとしているに違いない。微笑ましいというか、親近感が湧く。
「それで、アロイスは元気でやってるのかい?」
アニータが母親らしいことを聞いてきた。
「あの子ときたら、最近は全然顔を見せてくれなくてねぇ……。手紙ひとつ寄越さないし、どうしちゃったもんだか。あんた達、あの子に会ったら『たまには顔を見せに来い』って言っておいてくれ」
「え、ええ……わかりました」
そう言ったものの、自分の母親に会うことは禁止されているのだが。
――というかこのお母さん、アロイスがヴァルハラにいるって知らないのかな……。
ヴァルハラにいるということはつまり、もうこの世にはいないということだ。形はどうあれ、一度死んでいるということだ。
そんな大事なことを、母親が知らないのは違和感があるのだが……。
ともだちにシェアしよう!