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第1325話
「ちょっとあんた達! 何してるんだい!?」
騒ぎに気付いたのか、アニータが家の中からすっ飛んできた。
兄に掴まっているアーダンを見て瞬時に状況を理解したらしく、息子に近づいてベシッと頭を引っぱたく。
「アーダン! あんたまたこの人たちに殴りかかろうとしたのかい!? いい加減におしよ!」
「ちげーよ! こいつらが兄ちゃんの悪口言ってたから一発殴ってやろうと思ったんだ!」
「ええ……!?」
一ミリも掠っていない嘘に、呆気にとられて言葉を失ってしまった。
一体どこをどう解釈したら、「アロイスの悪口を言った」ということになるのだろう。さすがに理解に苦しむ。
「あの……俺たち、間違ってもそんなこと言ってませんよ。アロイスとはむしろ仲良くさせてもらってるので、悪口なんて言う余地がないです」
「何だって? ということはあんた、嘘までついたってことかい!? 一体何を考えているのかね、この子は!」
さすがに怒り心頭の母親に対し、アーダンは懲りずに反論してくる。
「嘘なんかついてねーよ! どーせお前らは、オレがいないところで兄ちゃんをいじめてるんだろ!」
「ええ……? いや、だから……」
「本当に仲がいいんだったら、兄ちゃんを連れてこないわけないからな!」
「……!」
「せっかく兄ちゃんが帰ってきてくれると思ったのに! お前らみたいな知らないヤツが家に来てて、何で兄ちゃんは帰ってこないんだよ! オレは兄ちゃんに会いたかったのに!」
「…………」
「連れてこれないってことは、仲が悪くていじめてるってことだろ! お前らなんか大嫌いだ!」
理屈が無茶苦茶すぎるものの、言いたいことは何とか理解できた。
とにかくアーダンは、アロイスに会いたかったのだ。帰ってきたのが兄ではなく、全く知らない第三者だったから、がっかりしたのと同時に怒りが湧いてきたのだ。
アーダンが兄・アロイスを尊敬していることだけは本当だろうから……。
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