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第1331話

「そりゃあ、そんな偉そうに言われたら、誰だって嫌に決まっているじゃないか。ちゃんと頭を下げて、『オレに訓練つけてください、お願いします』って言わなきゃダメだろう」 「……わぁってるよ」 「それと、ちゃんと迷惑かけたこと謝りなさいよ。悪いことをしたら謝るのは当たり前なんだからね」 「わかってるっつーの!」  半ば逆ギレのように怒鳴り、アーダンはこちらを見上げてきた。見上げるというより、半ば睨みつけているといった方が正しいかもしれない。  ――素直になれないお年頃ってやつかな……。まあ、そういう時期もあるよな。  もっとも、アクセルは反抗期らしい反抗期がなかったので、思春期がどんなものかあまりよくわからない。  兄にずっと育ててもらったとはいえ、十歳くらいになり自分で何でもできるようになってからは兄も出陣で家を留守にしがちだったし、自分も自分で兄に追い付こうと鍛錬に必死だった。反抗している暇などなかった。  ある意味、反抗期があるというのは恵まれていることかもしれない。 「……あのさ……」  アーダンが言いにくそうに言葉を吐き出す。 「その……昨日は、いろいろ、なんか……」 「ああ、うん」 「……いや、その……別にオレ、あんたらのことボコしたかったわけじゃなくて……兄ちゃんを連れてきて欲しかっただけで……」 「そうだな」 「だから、その……」  あれこれ言い訳しているが、肝心の「ごめんなさい」が出て来ない。謝る気持ちはあるんだろうけど、どうしても最後の一言が出て来ないらしく、言葉に詰まりまくっている。  無理に言わせるのも忍びないと思い、アクセルは助け船を出した。 「いや、もういいよ。俺は何ともないし、気持ちは伝わったから。兄上との訓練頑張ってな」 「お、おう……」  アーダンはややホッとしたような顔をすると、そのままこちらに背を向けた。そして兄の元に行き、 「おい、謝ってきたぞ。さっさと訓練をつけろ」  と、相変わらず偉そうな言い方をしていた。

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