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第1332話

 一方の兄はお説教するのも面倒になったのか、やれやれと腰を上げて家の外に出て行った。アーダンも兄に続いて家の外に向かった。 「ホントに、最初から最後まで迷惑かけっぱなしですまないねぇ……」  アニータが嘆きの溜息を漏らす。 「庇うわけじゃないけど、あの子も決して悪い子じゃないんだよ。口では突っ張ってみせてるけど、根は素直で面倒見もいいんだ。私の代わりに下の子を風呂に入れてくれたり、洗濯物を干してくれたりさ」 「ええ、そうですね」 「でもやっぱり、上の兄弟がみんな出て行っちゃったのが寂しいのかね……。特にアロイスがいた頃は、『兄ちゃん、兄ちゃん』っていつもアロイスの後ろをついて回ってたからさ。体格を考えずに何でも真似しようとして、アロイスが担いでいた丸太を自分も担ごうとして潰されそうになったこともあるよ」  昔からちょっとバカなところがあってねぇ……というアニータ。  思い出を語る彼女は、とても懐かしそうだった。もう戻らない日々だとわかっているせいか、どこか切ない色も混じっていた。  アクセルはうんうんと相槌を打ちながら、話に耳を傾けた。 「うちは貧乏だから、稼げるような歳になったら自発的に出て行く子が多くて。アロイスもそうだったんだよね。特にアロイスは兄弟の中でも一番力が強かったから、『兵士になって稼いでくる!』って飛び出して行っちゃってさ。アーダンは泣いて引き留めてたけど、アロイスも猪突猛進だからね。そういう反動もあって、余計に『兄ちゃんに会いたい』ってなっちゃったのかもしれないなぁ……」 「そうだったんですか……」  あのアロイスだったら、さもありなんである。やや早とちりで猪突猛進なところは、ヴァルハラに行ってからも変わっていないようだ。  ――再会させてやりたいけど、こればかりはアーダンが頑張ってヴァルハラに行かないとどうしようもないからな……。  心の中で頑張れよ……と応援していると、外からドーンと大きめの音が聞こえてきた。

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